「佐賀在住」ネットニュース編集者の違和感…「地方のテレビ局が都知事選のニュースばかり流すのはナゼか?」

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チャンネルを変えても都知事選

 そりゃあ日本の首都は東京ではあるが、正直、地方民からすれば「なんでオレらと関係ない都市の首長選挙にそこまで時間使うの?」ということになる。私が東京にいた頃、仮に佐賀県知事選の様子を連日のように見せられたら「なんも関係ないだろ!」とキレたことだろう。

 だが、日本のテレビは東京一極集中的な面が強いため、「都知事選みたいな芸能ニュース流しとけば全国の人も喜ぶだろw」と思っている節がある。これは、「原宿でタピオカミルクティー店が長蛇の行列」といった企画と同じようなものだ。

 本当に、我々地方民は東京都知事選への選挙権もないワケで、小池百合子や蓮舫の人柄やら実績なんて興味がないのである! イヤならチャンネル変えろ! と言われるだろうが、チャンネルを変えても都知事選のことを放送しているのだ。

 思えば、メディア使いが巧みな小池氏は、豊洲市場の移転問題でも随分と全国ニュースを作り上げてきた。「土壌汚染」「盛り土問題」など色々あった末に「大山鳴動して鼠一匹」といった状況で築地から豊洲への移転は無事終了したが、あれだけ移転に反対した小池氏は、移転後は豊洲のことを問題視せず。

供託金を支払えば

 あくまでも自分に注目させるために共産党も味方にして「盛り土問題」を大々的にメディアに報じさせたのだろう。華があり、キャッチーなワンフレーズを繰り出す小池氏はテレビメディアにとっては「寵児」ともいえる存在だ。蓮舫氏も同様である。だからこそ「これは数字が取れる!」とばかりにこの2人がメディアに取り上げられまくる。いや、私にとっては次の参議院選挙で地元の山下雄平氏が勝つかどうかの方が重要なのだが……。なんてことは思う。

 そして、いわゆる「泡沫候補」の皆さんも300万円の供託金を支払えば全国的知名度を得られるワケだ。そこでいかに目立つかがYouTubeのチャンネル登録数やオンラインサロンの会員獲得に繋がるか、ということである。

 小池氏や蓮舫氏も都知事選は自身の露出機会をドッカーンと増やすチャンスである。まぁ、それはいいが、頼むから東京都の選挙権を持っていない人間をそこに巻き込まないでもらえないか? 地方紙は通信社の都知事選関連記事を掲載しなければいいが、テレビは容赦なく東京の局が制作した番組をオンエアする。

 地方局は制作余力がないため、これらを流すことになるが、その情報いらないんです! 地方局も少しは報道人としての矜持を持ってください! そして、東京のキー局の皆さまにおかれましては「都知事選みたいな芸能ニュースは全国的に関心があるだろ」的に安易に作らないでもらえませんか? 都知事選がいかに地方に、そして日本全体に影響を与えるか、という深掘りだったら歓迎しますんで。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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