トランプ氏を支持する若者の「不安と怒り」…大学離れが進み、勝ち組女性に恨みを抱く者も
頑張っても報われない社会
この調査結果には理由がある。米国の学費は上昇を続けており、イエール大学などでは2024~25年度の学費が9万ドル(約1440万円)を超えるという。そのため、学生の多くはローンに頼らざるを得ず、卒業生の平均ローン残高は2万9000ドル(約1600万円)に上っている。
だが、苦労して学位を取得しても厳しい現実が待っている。米国の民間調査企業によれば、米国で最近学位を取得した人の約52%が大卒資格を必要としない仕事(飲食サービス、建設、事務補助等)に就いているという。
このような事情から、若者の「大学離れ」が進んでいるものの、非大卒者と大卒者の収入格差は一向に縮まっていない。若者の暮らしは厳しくなる一方だろう。
貧富の格差が広がっても「頑張れば報われる」社会であれば、国民の不満が溜まることは少ないだろう。だが、現在の米国ではこの「安全弁」が機能不全になってしまったと言っても過言ではない。
現在の米国は、GAFA(Google、Apple、Facebook=現Meta、Amazon)をはじめとする、カリフォルニア州の「テック貴族」が支配する新たな「封建制」の下にあるとの指摘もある(6月5日付ニューズウィーク日本版)。
中でも白人男性が最も不安や怒りを募らせていることだろう。今や高等教育機関では女性がますます勝ち組となっている。
勝ち組女性に圧倒される男性たち
修士の学位を取得する米国人の65%が女性であり、「女性のせいで自分はエリート層に入れなかった」と恨む米国人男性が増えているという(6月21日付日本経済新聞)。
米国でも多様性を推進する取り組みが活発化しているが、白人男性は多数派であるが故に、その恩恵に浴することができていない。
白人男性にメンタルヘルスの問題が急増していることから、彼らにも支援が必要ではないかという声が上がっている(3月29日付ニューズウィーク日本版)ものの、具体的な取り組みはほとんどなされていないのが現状だ。
現在のトランプ氏が最も支持を伸ばしている層は30歳未満の男性だ。黒人やヒスパニック系の有権者も含まれ、女性の社会進出に圧倒され疎外感を覚えている層だと言われている。彼らが惹かれているのは、トランプ氏が提唱する政策で自身の生活が改善するという期待よりも、トランプ氏がアピールする「男らしさ」だという(6月21日付日本経済新聞)。
トランプ氏が大統領選で勝利すれば、支持者に応える形で強権的な政治手法を駆使する可能性がある。そうなれば、米国社会の分断は致命的になってしまうのかもしれない。日本をはじめ国際社会は、トランプ氏再選の可能性を高めている米国の惨状をもっと深刻に受け止めるべきではないだろうか。
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