「元大企業の重役は嫌われる」「元商売人は職員に好かれる」 老人ホームで快適に過ごすためのコツを事例から学ぶ
高級な施設でも、介護の内容は決まっている
もちろん、高級老人ホームであれば話は別です。高級ホームには介護職員の他に本物のコンシェルジュやお手伝いさんがいるため、「相撲を見に行きたいから付き添って」とお願いしても、何とかかなえようとしてくれるはずです。しかし、高級ホームであっても、介護職員の仕事はあくまでケアマネジャーが作成したケアプランに沿って介護を実施すること。ときどき高級ホームでは“高級な介護”をしてもらえると勘違いされている方がいますが、介護の内容は決まっていますから、基本的に在宅であれ、低価格ホームであれ、高級ホームであれ違いはありません。高級ホームの介助になにか“特別な手技”があるわけではなく、介護以外のサービスを充実させているから「高級」なだけなのです。
あなたは利用者の一人でしかない
翻って、普通の老人ホームはどうか。普通の老人ホームにとって、入居者は「王様」でも「神様」でもありません。100人の入居者がいれば、あなたはその100人のうちの一人でしかない。入居相談の際には、施設は何とか入ってもらおうとするため、「1対1」で下にも置かぬ歓待を受けるでしょう。しかし、入居した瞬間に100分の1の対応に変わり、入居者は「なんて冷たい施設なんだ」と後悔するのです。
最近はさらに手厳しいホームもあるといいます。よほど扱いづらい利用者の場合は、施設側から「他を当たってください」と入居を断られたり、転ホームを迫られたりしてしまうのです。
介護業界も空前の人材難。どこの施設も現在の職員をつなぎ止めるのに必死で、おかしな利用者への対応で職員が疲弊し辞めてしまうくらいなら、利用者に出て行ってもらった方がマシ。入居希望者はいくらでもいるけれど、就職希望者はほとんどいないというわけです。
介護施設が乱立し、確かに多くの施設は入居者確保に必死です。しかし、施設側が求めているのはあくまでも「手のかからない入居者」。このような状況下では、介護される側の心構えも問われるということを認識しておくべきでしょう。
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