「元大企業の重役は嫌われる」「元商売人は職員に好かれる」 老人ホームで快適に過ごすためのコツを事例から学ぶ

ドクター新潮 ライフ

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 複雑極まりない介護保険制度の仕組みや介護施設の種類。しかしこれらをいくら研究しようとも、施設で嫌われ者になってしまえば、せっかくの準備も水泡に帰してしまう。この業界を知り尽くした小嶋勝利氏が説く、要介護者になる前に知っておくべき「心得」とは。

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 経験のある方はお分かりかと思いますが、満足のいく介護施設を自力で探すのは、並大抵のことではありません。そもそも介護保険制度が一般人にはまるで理解できない複雑な建て付けになっていますし、介護施設の種類も「介護付き有料老人ホーム」から「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「住宅型有料老人ホーム」まで実に多種多様。仮に「介護付き有料老人ホーム」に絞って施設を探しても、運営する会社や施設によって介護の「流派」が異なっているため、自分に合うホームを探し始めれば平気で1年や2年はかかってしまいます。

 でも、介護施設への入所を決めた人たちにとって、そこは「ついのすみか」になりうる場所。施設を自分で探さず、家族に丸投げしている人も多いのが現状ですが、本来は一生に一度の買い物といわれる「家」と同じくらい、時間をかけて吟味するべきです。

「介護される」とはどういうことか

 一方、時間をかけて自分に合った施設を見つけたからといって、それだけで快適な要介護生活が保障されるわけではありません。「介護ロボット」や「AI」の導入など介護の世界にも先端技術の波が押し寄せてはいますが、やはりまだまだ現場を支えているのは人の手。ロボットやAIと違って介護職員には感情がありますから、彼らに嫌われてしまっては、どんなによい施設でも、理想的な要介護生活は「絵に描いた餅」となりかねないのです。

 これは、「時間をかけてピッタリの施設を見つけた」という方にも「手っ取り早く近所の老人ホームに押し込まれそうだ」という方にも共通することですが、最後に物を言うのは結局のところ「人間力」。この国において「介護される」ということがどういうことかを理解し「あるべき要介護者の姿」を心得ておかなくては、どんなに時間をかけて施設を選んでも、その労力が水泡に帰してしまうおそれがあるのです。

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