不倫相手と親戚になりそう… 遠距離浮気を楽しんでいた54歳夫を襲った「SNS時代の悲劇」

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恐怖と辟易

 若いふたりは今のところ、恋を楽しんでいるようだ。結婚するまでは妊娠しないようにしたほうがいいと勇治郞さんは長男に言ったことがある。美冬さんがそれを聞きつけて、「子どもができれば踏ん切りがつくということもあるわよね」と言った。よけいなことをと彼は歯噛みした。ミチルさんの娘がひとり暮らしなので、長男は週末、外泊することも増えた。

「ただ、最近、もう若いふたりにすべて譲ってもいいような気になってきました。僕はふたりが結婚したらミチルとは、新婚夫婦の親としてつきあえばいい。ミチルがどういうアプローチをしてくるかわかりませんが、息子の妻の親と関係はもてない。それをミチルに言ったら、『そんなことない。あなたは今より気楽に私とつきあえる。離婚しなくていいわよ。このままの関係で』と諭されてしまいました。そう言われるとそんな気もする。なんだかね、いちばんはっきりしていないのは僕ですよね。ちょっと疲れているんだと思います。美冬にバレる恐怖もあるし、ミチルの強引なやり方に辟易しているところもある。それでも毅然とした態度をとれない自分がいるんです」

 客観的に見ると、そんな強引なやり方をするミチルさんをおもしろく思っている自分もいるのだと彼は言う。それほど愛されていると実感できるからだろう。強引でも嫌だとは思わないところに、彼のミチルさんへの思いが凝縮されている。

 これからどうなるのか。「怖いだけです」と彼自身は言っていたが、案外、心の隅で楽しみにしているように思えてならなかった。

勇治郞さんの歯車はどこで狂いだしたのか――【前編】で美冬さんとのなれそめ、次男の「不登校事件」を読む

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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