自分は妻子から疎まれているのでは…不倫に走った54歳夫 「衝撃を受けた」一心同体だったはずの妻の振る舞い

  • ブックマーク

【前後編の前編/後編を読む】不倫相手と親戚になりそう… 遠距離浮気を楽しんでいた54歳夫を襲った「SNS時代の悲劇」

 年代も性別も問わず、マッチングアプリが大流行りだ。コロナ禍以降、多くの人たちが「出会いはアプリで」になった。実際、周りでもコロナ禍にアプリで知り合い、そのまま結婚に至った人たちが数多くいる。出会って親しくなるまでの「コスパとタイパ」を考えれば、飲み会や合コンよりずっと効率的だと考えられているようだ。

 だが、もちろん条件で絞り込まれるマッチングアプリより、「ひとりの女性」と知り合ってじっくり恋愛し結婚するほうがいいと考える人もいる。松木勇治郞さん(54歳・仮名=以下同)はそのタイプだ。自身が出会った女性と関係を育んで結婚に至った経緯があるからだろう。

「妻となった美冬とは、社会人になって3年目に友だち主催の飲み会で知り合いました。彼女、子どものころから剣道をやっていたというんです。僕もそうだったから、なんだか剣道の話で盛り上がって……。他には誰もついてこられない内容でしたから、ふたりだけの世界ができあがったんです」

 その後もふたりで会うようになった。勇治郞さんはすでに剣道から離れていたが、美冬さんは続けているという。紹介してもらって同じ道場に通い始め、彼女との距離はさらに縮まった。

「3年ほどつきあって、お互いにどういう家庭を作りたいかも話し合い、すりあわせて結婚しました。僕、愛情は意志だと思っていたんです。恋は情熱や欲望が勝つかもしれないけど、結婚にそれらは必要ない。むしろ確固たる意志で、愛情を示していくのが結婚だと信じていました」

28歳で新しい家庭…「うれしかった」

 高校は男子校だったため、恋愛に縁がなかったが、大学生のころはそれなりに恋もした。大好きな女の子に振り回されたあげく、思い切りフラれたこともある。女は怖いとも思ったが、それでもやはり信頼できる女性と家庭を築きたかった。

「僕が育った家庭が特別よかったというわけでもないけど、でも家族がいて誕生日にはケーキを買ってもらったり、夏にはみんなで旅行したり、家族がいるのはいいことだと思っていました。家庭に恵まれていなかった友人に言わせれば、『無条件に家庭はいいものだ、家族がいるのはいいことだと思っているおまえはおめでたい』そうです。不信感を抱かずに成長できたのは確かに両親のおかげかもしれません」

 美冬さんも似たような環境で育っていた。剣道を始めたのは兄の影響で、両親も応援してくれていたという。

 ふたりとも28歳。新しい家庭を一緒に作る旅のスタートに立ったとき、勇治郞さんは心からうれしかった。

「大人になったと初めて思いました。ふたりで共働きをして自己実現を図りながら、子どももふたりはほしいと思っていた。それがその通りになりました」

 30歳で長男を、33歳で次男をもうけた。やんちゃな男の子に美冬さんは手を焼いたが、勇治郞さんは男の子を育てるのがとても楽しかった。ふたりの両親も近くにいたので、みんなで子どもたちの成長を見守ることができたのは「運がよかった」という。

次ページ:狂いだした歯車

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。