「高校デビューに失敗して根暗そうな男に話かけ…」 現代美術作家・パピヨン本田が語るロックンロールとの出会い

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根暗ゆえに高校デビューに失敗

『美術のトラちゃん』『常識やぶりの天才たちが作った 美術道』など、現代美術をテーマにした漫画を執筆する、現代美術作家のパピヨン本田さん。高校時代、美術作家を目指していた彼はある日、パロディーやオマージュを唯一無二の音楽に昇華する「毛皮のマリーズ」というバンドに出会い……。

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 初めまして。現代美術をモチーフにした漫画を描いているパピヨン本田と言います。

 自分の生活にはロックンロールが欠かせません。毎日聴きます。

 でも高校に入るまではロックンロールなんて全く興味もなかったのです。

 中学まで全然目立たないグループに属していた根暗な自分は、中学までの知り合いがあんまりいない高校に入ったのをいいことに高校デビューをもくろんで、積極的にスクールカーストの1軍グループに話しかけにいったりしました。でも根暗なので、すぐにメッキが剝がれ、1軍にはなれませんでした。もくろみ失敗。

「こいつと居ればもっとかっこいい音楽が聴けるぞ」

 仕方なく教室の隅でぼーっとしていたら、同じく教室でぼーっとしている小林という根暗そうな男を見つけました。小林はずっと誰ともコミュニケーションを取らず休み時間はiPodで何かを聴くか、寝てました。自分は小林と仲良くなりたかったわけじゃないけど、彼が何を聴いているか気になって話しかけてみたのです。

 どうやら自分が全く知らない洋楽を聴いていたらしい。動画も見れるiPodで見せてもらったのは、The Whoが1967年にモントレー・ポップ・フェスティバルで「マイ・ジェネレーション」を演奏している動画でした。一生忘れません。めちゃくちゃ激しくて、今まで見た映像、音楽の中で一番かっこよかった。少し泣いたかもしれない。

 この小林というやつはどうやら、この手の音楽にものすごく詳しいらしい。こいつと居ればもっといろいろかっこいい音楽が聴けるぞと思い、小林とつるむようになって、高校デビューはいよいよ大失敗に終わります。けど、ロックンロールデビューをしました。田舎の教室の隅で、時代をつくったロックンローラーのオリジナリティーを二人して浴び続けました。

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