中東最強・イスラエル軍の根幹「徴兵制」が揺らいでいる“意外な理由”とは

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女性も従軍

 一般的な徴兵期間は、男性の32カ月に対し、女性は24カ月とやや短い。女性の場合、以前は就くことができる職務に制限があり、秘書などのバックオフィスでの仕事が多かったが、近年は軍内でもジェンダー意識が改善され、エリート戦闘部隊や戦闘機パイロットなど「よりプロフェッショナルな職務」(エルラン上席研究員)に就くことが増えている。

 筆者は今年2月、エジプトとの国境周辺に配備されている戦闘部隊の女性兵士ミア伍長に電話で話を聞いた。ミア伍長は、出身地は明かせないものの、国外のユダヤ人がイスラエルに移住(帰還)する制度「アーリヤ」を利用し、イスラエル国籍を取得した。親や祖父母がユダヤ人であれば、イスラエルへの移住が可能になるというこの制度を利用して、例年約2万人から3万人がイスラエルに移住する。ミア伍長は、大人になってからの移住組のため兵役は義務ではなかったが、自ら志望して軍に入り、男女混成の戦闘部隊に配属されている。

 ミア伍長は志願の理由について、「イスラエルでは誰もが参加する制度だから、社会に統合されるために志願した。私の部隊は男性よりも女性の方が多く、強い女性が多いので、男性は大変だと思う。もちろん速く走るとか重たいものを持ち上げるという意味では、男性の方が有利かもしれないけど、兵士としての職務に違いは感じない。精神力の方が大事だと思う」と、時折笑いを交えながら流ちょうな英語で話した。

「エリート戦闘部隊に就けば成功につながる」

 今でこそ、イスラエルが「スタートアップ国家」として知られるようになり、「8200部隊」などのエリート・インテリジェンス部隊の名を聞いたことがある人もいるかもしれない。しかし、イスラエル社会のエリート層を構築してきたのは基本的に「エリート戦闘部隊」だ。

「戦闘隊員が多く輩出する町」として知られるテルアビブ近郊のホド・ハシャロン(人口約6万人)。社会的なエリート層が多く暮らし、街はタワマンの建設ラッシュに沸く。小じゃれたワインショップの軒先には、歩兵戦闘部隊「ゴラニ部隊」のシンボルである黄色と緑の旗が掲げられていた。店主の兄弟が、ゴラニ部隊の一員としてガザで戦っているという。

 道端で徴兵前の16歳の男子高校生に話を聞くと、「対テロ特殊部隊ドゥブデバン」など複数の部隊名をあげ、「エリート特殊部隊での任務に就きたい」と語った。戦闘部隊に従事することに恐怖はなく、両親も息子の目標達成をサポートしているという。住民の一人は、「この街には社会的に成功したいと思う層が多い。軍でエリート戦闘部隊に就けば成功につながり、国に貢献することもできる」と話した。

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