蝶花楼桃花が「31日連続でネタおろし」に挑戦 「“何か自分に負荷をかけなくちゃ”と…」

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 落語界の“ネタおろし”とは、新たな噺(はなし)を初めて客前で披露することを指す。それを31日にわたって続ける取り組みに、蝶花楼桃花(43)が名乗りを上げた。7月1日に開幕する「桃花三十一夜」で、会場は東京・池袋演芸場。夜席興行が終了した、午後9時からの開演となる。

桃花の意気込みは?

 桃花が意気込みを語る。

「日頃から、昼席と夜席以外に寄席を利用できないか考えていて。それで今回、深夜帯での企画を思い付きました。何か“自分に負荷をかけなくちゃ”と、1カ月の長丁場を自分に課すことにしたんです」

 終演は午後10時20分ごろの予定という。

「お客さんが、会の帰りに一杯寄ったとしても終電に間に合う時間帯。池袋は深夜もにぎやかな町ですし、こうした試みを他の地域にも広げていけたらうれしい」

 準備している新ネタは古典と新作の半々を予定している。とくに新作は自作のものにとどまらず、新作派の落語家たちから提供された作品にも挑戦するそうだ。

「おろすネタは1日1席なので全部で31作。ただ、上方落語の『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』は長編の大作なので、上・中・下の3回に分けて演じようと思っているところ」

 桃花は連日、ネタおろしを含めた2席を披露。加えて31人の二ツ目が、ゲストとして日替わりで登場する。

「先輩をお招きできれば安心ですが、今回は私が責任を持って開催する興行。これを機会に、お客さんに若手二ツ目たちの存在を知ってほしいですし、彼らにとっても勉強の場になればいい。だから、キャリアの面で下から31番目までの二ツ目たちに、ゲストをお願いすることにしたんですよ」

背中を押してくれた師匠の言葉

 振り返れば平成2年、桃花の師匠である春風亭小朝(69)も、東京・銀座の博品館劇場で30日間連続の独演会を開催した。演じた60席の半数に当たる30席がネタおろしだったという。

「師匠は34年前に取り組んだ独演会を“大変だった”と思い出していました。これが唯一、師匠の口から聞いた“大変”という言葉だったので、私は強い印象をもって覚えていて。そこで今回の挑戦を相談したら“良いじゃないの。面白い、やりなさい!”と、とても喜んでくれました」

 開幕を間近に控えたいまも、ネタおろしの噺を頭に詰め込み続ける日々だ。

「実際に興行が始まってからも、高座と並行して噺を覚えることになると思います。詰め込んでいると“この噺は覚えやすい”とか、“私の個性や体に合う”という具合に新しい発見があるのも面白くって」

 観客の動員に定評のある桃花だけに、チケットの売れ行きは好調だ。

「おかげさまで、初日と楽日は完売しました。期間中はすべての高座を楽しめる“通し券”を売り出したところ、10人以上の方が購入してくれたんですよ」

 7月いっぱいは、在京が課される“禁足状態”。何件か日帰りでの地方営業を抱えつつも基本的に「この興行に全力投球」(桃花)という。

「緊張しやすい性格なので、夜中に失敗する夢を見て飛び起きることもありますよ。もしかしたら後半は疲弊するかもしれませんが、そんな私をドキュメンタリー風にご覧いただくのも見どころの一つかな。千秋楽を迎えた時に、どんな景色が見えるのか、いまから楽しみで」

週刊新潮 2024年6月27日号掲載

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