酒もタバコも20歳から…でも、「後悔はない」 ステージ4の下咽頭がん、57歳・見栄晴の死生観

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「手術」という選択はない

 実は、治療のはじめの段階で、手術して声帯を切除するか、抗がん剤治療と放射線治療をするか、どちらかの選択を迫られたんです。先生からは、手術のほうが治る確率が高いというような話を受けました。「ただ、声帯を取るので、声が出なくなります」とも言われたんです。

 そこで初めて、自分が何の仕事をしているかを先生に伝えました。先生は若く、僕より年下です。マスクをしていたので、それを取って、「すいません、実はタレントやっていまして、ご存じですか」と聞きました。でも、先生からは「いや、存じ上げないんで、すいません」と言われて……ちょっとショックを受けました(笑)。

 先生には「今まで、何十年も喉を使って仕事をしてきました。声帯を取って声が出なくなると仕事ができなくなる。僕の中で、手術という選択肢はありません」と言いました。「声が出なくなったら、正直、生きている意味がないと思います」と。命よりも、自分の仕事、生き甲斐が大事だったんです。

 まだこの年ですし、生きることを選択する人もいるでしょうが、長生きしたいとは思わなかった。死ぬことが怖くなかったんです。なぜなら、まわりがみんな逝っちゃっていたから。一人っ子だったんですが、親父は自分が小さいころに亡くなって、母親も7年前に亡くなっています。だから、逝くことに関して怖さはありません。その感覚は昔からです。

 声が出なくなる自分のことを考えると、生きている方が辛い。だから、手術という選択肢は僕の中でありえなかったです。先生には、手術以外の選択肢、「抗がん剤治療と放射線治療をお願いします。社会復帰したいので、そのための治療なら、どんな治療も受けます」と伝えました。

 CS放送の「競馬予想TV!」は1998年の番組発足当初からMCを務めてきました。これまで、1000回以上出演してきましたが、休んだのは1回だけ。すごく仲の良い貴闘力とお正月に酔っぱらって、相撲をとった時に、抱えあげられてゆっくりと下してもらった時に、足をねん挫してしまって……その時だけお休みをいただきました。

 その番組を治療のため、1月20日の放送をもって、一時的に降板することにしました。毎週土曜午後8時から、25年以上続けてきた生放送に穴を空けることは、自分にとって大きな決断です。

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