注目の石丸伸二氏は街頭演説でどんな話をしているのか 選挙のプロは「支持者以外にはやや拍子抜けの印象」【都知事選】
支援者だけでは足りない
鈴鹿さんは「動画を見ると、石丸さんの街頭演説には多くの支持者が集まり、熱心に耳を傾けている様子が伝わってきます」と言う。
「実は街頭演説には身ぶり手ぶりの使い方や発声法など、長年の蓄積に基づいた“必勝法”があります。しかし石丸さんは、ご自身が独自に編み出した方法で演説されているという印象を持ちました。既存の政治家に嫌気が差している支援者には新鮮な印象を与える可能性がありますが、石丸さんが蓮舫さんを抜き、小池さんも逆転して勝利するためには、支援者に声を届けるだけでは足りません。石丸さんに興味を持っていなかった有権者が偶然に街頭演説を聴き、『石丸さんって人は意外にいいことを言うな』と興味を持ってもらう必要があります」
選挙にネットが活用されるようになって久しい。街頭演説に旧態依然としたイメージが生まれても不思議ではなさそうだが、現在の有権者は特に街頭演説を重視するという。日中は仕事で演説を聞けない有権者はネット上で動画を探す。「演説には人となりが出る」と考えるからだ。
「選挙で勝つために街頭演説で声を届ける必要があるのは、目の前に集まってくれている支援者ではありません。無関心な歩行者であり、車道でハンドルを握るドライバーなのです。石丸さんの経歴も公約も人となりも知り抜いている支援者なら、あの演説を高く評価するでしょう。一方で、『小池さんにも蓮舫さんにも入れたくないから、話題の石丸さんってどんな人なのか見てみたい』という有権者には、やや拍子抜けの演説かもしれないと思いました」(同・鈴鹿さん)
誤解を招く可能性
鈴鹿さんが特に注目したのは、「日本の政治を変えることができるのは皆さん」という呼びかけだ。
「石丸さんの支援者なら、『政治を変えるのはあなたです』とご本人から直接、バトンを渡されたような気持ちになって嬉しいのかもしれません。しかし一般の有権者からは誤解される危険性があるのではないでしょうか。『自分ではなく、候補者に政治を変えてほしい』と期待している人のほうが多数だからです。そういう有権者には『石丸さんは他力本願の政治家なのだろうか? リーダーシップがないのだろうか?』と受け止めかねません」
さらに石丸氏は「今度の都知事選を楽しみましょう」と呼びかけることも多い。これにも違和感を覚えるという。
「政治は『まつりごと』ですから、選挙にお祭りの要素があることは否定しません。ブームを巻き起こそうというメッセージが込められているのかもしれませんが、これも一般的な有権者には『私は選挙を楽しみたいとは考えていない。真面目に一票を投じたい』と反論されるリスクがあると思います。石丸さんが都知事選に勝つには支援者ではない、一般の有権者を巻き込む必要があります。そのためには都知事になってやりたいこと、都知事選に賭ける想いなど、普通の立候補者が普通の街頭演説で発するメッセージを、ストレートに聴衆にぶつけてみることも必要なのではないでしょうか」(同・鈴鹿氏)
なお、石丸氏が安芸高田市長だった時の意外な評判について、デイリー新潮では「『敵対した議員に“殺すぞ”のメッセージが』 安芸高田市長・石丸伸二氏の地元での評判…『極めて生産性が低い市長』の指摘も」で詳しく報じている。