聖光学院は東大「現役合格率」が突出…卒業生が明かす「教員」の圧倒的な熱量 「情操教育」で“考える力”

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開成や麻布を蹴って進学

 今年春、受験界を揺るがせたニュースがあった。神奈川県内の私立高である聖光学院が、名だたる名門私立進学校を抑えて今年、東京大学への現役合格率でトップに躍り出る快挙を成し遂げたのだ。難関校の多くの生徒が東大合格専門指導塾「鉄緑会」に通っているが、聖光学院は塾に頼らない教育方針があるという。毎年40人ほどが開成や麻布を蹴って進学する聖光学院。強みは受験指導に長けた東大、京大卒の質のいい教員が多いことだ。躍進の理由についてさらに探ってみた。

 聖光学院はカトリック精神による人格の尊厳と愛の理念を掲げている男子中高一貫校。歌手の松任谷由実が歌った「海を見ていた午後」に登場する横浜・山手のカフェ&レストラン「ドルフィン」から徒歩数分というオシャレなイメージのエリアにある。しかし、話題となっているのは、何といっても東大合格者数だ。今年は開成の149人に次ぐ100人の合格者を輩出し、昨年の5位から2位に躍進した。

 教育ライターがこう指摘する。

「開成の卒業者数はおよそ400人であるのに対し、聖光学院は229人でしたから比率では開成を凌駕しています。現役合格率に注目すると、聖光学院は37.55%で、2位の灘(32.57%、兵庫)、3位の開成(29.10%、東京)を大きく引き離しました。まさに驚異的な成績と言えますね」(※国公立高校を含めると、東大現役合格率は筑波大付属駒場の43.13%が最高)

 何が聖光学院をここまで飛躍させたのか。有名なのは「塾に頼らない」という教育方針。同校を卒業し現役合格した東大生がこう話す。

「東大受験に関して言えば、学校の勉強を優先し塾は補完的な役割を果たしているに過ぎなかったように思います。塾に通っていた生徒の中でも、学校の勉強より塾の勉強を明らかに優先して取り組んでいた生徒は少数です。確かに生徒の約10~15%が鉄緑会に通っているようでしたが、その主な動機は東大理3や難関大学の医学部を目指している生徒。大多数は学校のカリキュラムに頼りつつ、得意科目を伸ばしたり苦手科目を克服したりするために、他の塾や個別指導に通っていたようです」

 確かに、鉄緑会のHPを見ると、同会在籍数1位は開成の1119人。聖光学院は114人とかなり少ないことが分かる(2024年5月現在)。

授業内で東大の過去問

 塾に頼らない教育方針の礎となるのが教員の質だろう。聖光学院には東大や京大出身の教員が多く、受験指導の経験も豊富という。「自身の経験や先輩の受験を踏まえて受験アドバイスをしてくれる先生が多いです。熱量が低い教員はほとんどおらず、概して教師は愛校心が強く、生徒の面倒見は良かったです。中には、自分で400ページにもなる教科書を作り配布する先生がいるほど。教員の質の高さが学校全体の学力向上に寄与していると思います」(前出の現役合格した東大生)

 この東大生によると、聖光学院のカリキュラムは、高校1年生までに高校の学習内容を終え、高校2年生、3年生では受験に向けた応用や演習を行っている。授業内で東大の過去問を解き、先生がその添削を行うなど具体的な対策が徹底されているという。これにより、生徒たちは学校内で十分な学習を行い、塾に通わずとも高い成果を上げることができるようだ。

 聖光学院の情操教育も見落とせない。

「ミサは年に数回、また年に1回、芸術鑑賞会などが行われています。これらが生徒にどのような影響を与えているかは明確ではないですが、“考える力”を育てる一助となっている可能性はあります。また、先生たちは毎学期に1度面談を行い、生徒の相談に乗ってくれます。熱量が高く、生徒1人ひとりを大切にする姿勢が感じられます」(同)

 特筆すべきは、開成や麻布を蹴って聖光学院に入学する生徒が毎年40人近くに上ること。特に神奈川県に住む生徒にとって、23区内の学校は遠く通学が困難だ。

「個人的な印象ですが、開成や麻布を蹴って聖光にきた生徒の多くは、神奈川県に住む生徒のような気がしています。その理由としてはやはり23区内に通学するのは遠く、特に開成は神奈川とは反対側にあり、通学電車も通勤客で非常に混雑することがあると思います。もちろん、両方合格したら開成を選ぶ受験生もいるでしょうが、昔と比べて聖光の実績が上がったことで、聖光を選択する生徒が出てきたんだと思います」(同)

 最近は、23区内在住でも横浜の聖光学院を選ぶ受験生が現れ始めた。この東大生がアピールするのは聖光学院の校風だ。

「聖光学院の魅力は、受験勉強に関することだけではなく、生徒の幅広い活動を否定せずサポートする“ホーム感”にあります。さまざまな課外活動で活躍している生徒がおり、学校は生徒の気持ちを尊重し、適切な対応やサポートを提供しています。生徒たちは安心して自分の目標に向かって努力することができるように思います」

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