「中国には日本人学校が多すぎる」「中国人が入学できないのはおかしい」 日本人学校“批判動画”の中身とは
「なぜ中国に日本人学校が多いのか」
ある動画では、配信者の男性が日本人学校脇の歩道を歩きながら防犯カメラなどを見上げ、日本人学校はなぜこんなに閉鎖的なのかなどと話す。そのコメント欄には「なぜ中国に日本人学校が多いのか」「なぜ閉鎖しないのか」「中国の法規に従って認可を受けているのか」「中国人が入学できないのはおかしい」といった内容が並ぶ。
配信者が指摘した「閉鎖的」とあわせて、これらが日本人学校に対する主な疑問だ。初老の男性が日本人学校の校門前で「ここは日本租界か!」と興奮気味にまくしたてる動画も転載を繰り返されているが、そのほかの動画では「問題だが、まずは疑問が浮かぶ」といった疑問語りかけ型も目立つ。
最初の動画を見つけるのは困難ながら、2021年11月には「日本人学校のテーマ入り」が確認されていた。きっかけは柳条湖事件(満州事変の発端)の発生から90周年を迎えた同年9月18日頃、SNSで「日本人学校が多すぎる」という内容の文章が注目されたことだという。
また、同月1日には、京都の街並みをモデルにした大連の「日本風情街」が閉鎖に追い込まれる一件が発生。そこから派生した話題として「大連には何年も前から日本人学校がある」というネット記事も配信されていた。
「中国国民の子弟の募集」は違反行為
この当時に投稿された動画は現在も閲覧可能だ。今年に入ってからも疑問語りかけ型やデマを流布する動画などが投稿されているが、一部は「日本人学校は35校」といった当初からの間違いを繰り返している。昨年3月には香港俳優の欧陽震華(ボビー・オウヤン)が中国SNSのWeiboで突然「日本は中国で多くの学校を建てたが日本人専用であり、中国人の立ち入りを禁止している」と言い出し、「合理的な説明」を求めた。
その「合理的な説明」はネット検索で知ることができる。中国には外国人駐在員の子女が通う学校に関する規定があり、その第17条に是正や業務停止命令の可能性がある行為として「領域内での中国国民の子弟の募集」が明記されているのだ。
さらに、日本人学校は文科省から在外教育施設の認定を受けるものの、設置と運営は現地の日本人会や商工クラブなどが主体の私立学校であり、その設置の許可を出すのはもちろん中国側だ。防犯カメラに代表される「閉鎖的」の指摘は、元はと言えば前述した嫌がらせ行為や、外部から授業中の校庭などを撮影した映像などに原因があるとも考えられる。
答えが簡単に調べられる疑問を繰り返すことで、日本人学校は息の長いテーマになってしまったようだ。「ドウイン」では、そうした状況を見かねた配信者からの正しい解説動画も複数表示される。そのうちの1本には「知っている人も多いはずの話なのにね」という呆れたユーザーからのコメントが寄せられていた。