「パンツの中をのぞいて陰毛検診」問題 それ以上にヤバかった“擁護派医師”の衝撃発言(中川淳一郎)

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 群馬県みなかみ町の小学校で行われた内科検診で、70代の男性医者が約100人の児童のパンツの中をのぞき、陰毛の有無を確認しました。保護者が訴え出て、学校は謝罪。医者は、成長と成熟のアンバランスさを見ることが重要だとの考え方からこの行為に及んだようです。触られたと言う女児もいたということですが、医者は否定しています。医者以外が小学生に同じことをやったら逮捕です。

 仰天の医者がいたものですが、もっと仰天したのがX上に彼のことを擁護する医者と、その支持者が存在したことです。参議院選挙にも出馬した経験のある某医者は自分の子供が同じことをされて泣いた場合の対応を聞かれ、以下の趣旨の投稿をしました。

〈「びっくりしたね」と慰めつつ、「己の無知を恥じなさい」と伝え、小児科学の成書で顔面をぶったたく〉

「成書」とは分厚い医学の教科書ですが、十分凶器になり得る。これに対する反応は当然批判的なものが大多数ですが、同氏を擁護する支持者はこのような趣旨のことを書きました。

〈無知な子供の感情よりも、医者が正しい知識を基に判断するのに何の問題があるんだ〉

 この医者はコロナ騒動の時、マスクとワクチンの重要性を説き、医者の知識なめんなよ、的発言をした人物です。そして擁護者は常に感染対策推進側の医者を擁護し続け、疑問を抱く人間を無知なカルト宗教信者であるかのように扱った。

 コロナでは、尾身茂氏をはじめとした政府分科会の方針が金科玉条のごとく存在し、日本医師会と各地の医師会の自粛・対策要請も重要視された。そして、彼らに同調する個々の医者がメディアやXでその方針を拡散し、支持者からは感謝された。そして支持者は疑問を抱く者を勝手に集団で攻撃してくれた。

 私はこちらこそ「医療カルト」だと思います。対策を推進する医者の言うことはすべて正しい。ただし、コロナを怖がらず過剰対策に反対する医者は公衆衛生の敵である!

 かくして推進派の医者は、彼らにとって教祖のような存在になっていったのです。だから、その医者が今回のパンツをめくる検診を擁護したら自分も擁護するマインドになっていった。

「医者は健康と公衆衛生のために最前線で奮闘してくださっている。そんな立派な方々に異論を挟むのは許されない」という空気感ができてしまった。これまで医者が文化・政治・経済・健康・教育など社会生活全般をあれだけ指導できたことなんてなかったので、万能感を得たのでしょう。

 今回の件は、当事者である70代男性医者も、擁護する医者も「私は正しい」という観点に立ち過ぎている。

 そして自信を持ち過ぎるとおかしな方向に行く。尾身氏は2021年夏、「日本を救うダンディーなおじさま」扱いになり、「#ねえねえ尾身さん」のTシャツを着てインスタグラムのライブを実施。しかし同氏が理事長を務めていた医療法人の「幽霊病床などで補助金311億円獲得問題」もあり、罵詈雑言が殺到し、以来インスタライブはせず。

「尾身さんを1万円札の肖像に!」みたいな称賛ばかり目にしてきたものだから、容赦ない批判にはおののいてしまったんでしょうね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年6月27日号掲載

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