“消えキャラ”が極端に少ない「虎に翼」 過去の「朝ドラ」は“出会いと別れ”の繰り返し

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「虎に翼」の登場人物たちは消えない

 朝ドラことNHK連続テレビ小説「虎に翼」には従来の朝ドラとは異なる点が多い。その1つが消えキャラ(途中で姿を消すキャラクター)が極めて少ないこと。テーマである憲法14条「法の下の平等」に沿い、1人ひとりが努めて丁寧に描かれている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

 朝ドラの主人公は出会いと別れを繰り返す。キャラクターたちは他界しなくても次々と消えてゆき、その後の動向が分からなくなる。

 趣里(33)が福来スズ子役で主演した前作「ブギウギ」の場合、スズ子が所属した梅丸少女歌劇団(USK)の親会社・梅丸の大熊熊五郎社長(升毅)が第8回から登場したが、第33回でいなくなった。ほかにも消えキャラは数多い。

 神木隆之介(31)が槙野万太郎役で主演した前々作「らんまん」も同じ。槙野家と親しかった深尾家家臣・塚田昭徳(榎木孝明)や槙野家の分家で万太郎を嫌っていた豊治(菅原大吉)たちが前半でいなくなり、その後の消息は不明だった。

 巡り合いと別離は人生の真実の一部分だから、仕方がない。しかし「虎に翼」は異なる。脚本を書いている吉田恵里香氏は、出会った人とつながり続ける人生もある、と言いたいのではないか。逝去する人物以外、消えキャラが極端に少ない。

 伊藤沙莉(30)が演じるヒロイン・佐田寅子にとって、それほど大きな存在とは思えなかった明律大法学部の同級生・小橋浩之(名村辰)とも縁が続いて いる。小橋は1937年だった第26回を最後に出演が途絶えていたが、1947年という設定の第47回から再登場した。

 小橋は1933年だった第12回、明律大女子部にいた寅子たちによる法廷劇中、「どうせ誰も弁護士なんてなれねーよ」と心ないヤジを飛ばしたことが記憶に新しい。観る側に「ドラマによく出てくるダメ学生の1人終わるのではないか」と思わせた。

 しかし違った。裁判官になっており、司法省(現・法務省)民事局民法調査室で寅子の同僚になった。

 再会時に寅子が驚いたのも無理はない。小橋は「おまえ、俺じゃあ高等試験に受からないと思ったんだろう」と不愉快そうだったが、それが自然だ。

 小橋は相変わらず憎まれ口を叩くものの、学生時代よりは落ち着いている。吉田氏の書くキャラは不自然さがない範囲内で成長する。

 やはり同級生で、餓死した東京地裁裁判官・花岡悟(岩田剛典)とともに1937年の高等試験に合格した稲垣雄二(松川尚瑠輝)ともつながっている。第26回以降は出演がなかったものの、1948年の第52回から再び出ている。同じく裁判官となっており、寅子と家庭裁判所設立準備室で同僚となる。

 同じ年の第55回、稲垣は感涙にむせんだ。少年審判所と家事審判所の関係者たちの心が1つになり、家庭裁判所設立の道筋が付いたからだ。

 稲垣は1935年だった第18回、同級生たちで行ったハイキングで、大庭梅子(平岩紙)が連れてきた3男の光三郎(幼少期・石塚陸翔、青年期・本田響矢)に対し、父親で弁護士・大庭徹男(飯田基祐)の妾の話を吹き込んでいる。寅子は「そんな話を子どもにしないで!」と怒り、梅子は傷ついた。

 その稲垣が家族の幸福を考える家裁の誕生に涙するのだから、月日は人を変える。吉田氏はキャラを善玉、悪玉に単純2極化しない。

 梅子(平岩紙)は1949年の第61回に帰ってきた。徹男が亡くなったため、遺産相続問題が浮上。家裁の特例判事補の寅子が調停を担当することになったからである。

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