【都知事選のカオス】「けなし賃」「選挙はがき横流し」で金儲けしていた者も…ポスター掲示場ジャックよりもヤバい候補者の悪業

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昔の選挙もひどかった

 このようなNHK党のやり方に、多くの批判が集まっています。

 しかし、選挙制度を利用して金儲けをたくらんだ人が現れたのは今回が初めてではありません。拙著『ヤバい選挙』でも紹介しましたが、過去の選挙でも大きな問題になったことがありました。

 わかりやすいやり方は、選挙妨害をツールとして使うというものです。悪質な候補者の中には、誰からも金をもらっていないのに狙いをつけた候補者Aの妨害を行い、やめる代償として候補者Aから金をせびり取り、さらには返す刀でその候補者の対立候補Bの妨害をするから「けなし賃」をよこせと提案する者すらいました。

 1963年の東京都知事選では、この種の妨害が組織的かつ大規模に行われました。多数の右翼系候補が現職である自民党の陣営から資金提供を受けて立候補し、有力な対立候補だった革新統一候補が演説しようとすると、選挙カーから軍艦マーチを大音量で流したり、悪口を言ったりして演説の妨害を行いました。

 他にも、かつては「自分には支持をしてくれるこれだけの票がある」と他候補に言い、立候補を辞退するから金をよこせと言って票を「売る」者もいました。

 選挙公営制度を悪用した、この種の金儲けが大いに問題になったのは、1960年代でした。代表的なやり方としては、選挙管理委員会より交付されたさまざまな物品を横流しして金銭に替えてしまうというものがあります。

 例えば、当時はポスター用紙が各候補者に交付されており、これを紙屋に売って金銭に替える候補者がいました。また、最も問題となったのは、選挙はがきの横流しでした。選挙はがきは現在もある制度で、各候補者は一定数のはがきを無料で有権者に送ることができます。そこで、候補者である自分に割り当てられた選挙はがきを、別の候補者に売る者が現れたのです。

 他には、公費で新聞に掲載される選挙広告をめぐって広告代理店からリベートをもらうといった手法があげられます。選挙に立候補するための供託金はかなり高額で、参政権の観点から問題となっていますが、このように金儲けをたくらんだ人が多数いたことが高額化の一因となっています。

ネットの登場によって大きな変化が

 しかし、NHK党によるポスター掲示枠の「販売」には、選挙制度を利用した過去の金儲けと大きく異なる性質があります。今までは少数の当事者間でこっそりと行われていたのに対し、NHK党は世間に対して大きく「販売」の宣伝を行うという、広く大衆を巻き込んだものだった点です。

 選挙制度を利用しての金儲けは過去にも見られたことですが、このような手法はインターネットの発達で可能になりました。今回の「販売」はそういう意味では異色なものとなっているのです。

 ただ、大衆に向けて宣伝しているのですから、大衆がこの行為を良いものと思わなければ、金儲けができなくなるということでもあります。事実、筆者はいくつかのポスター掲示場を見て、NHK党のサイトでポスター掲示場の受付状況を確認しましたが、「販売」が成約しているところは決して多くなく、想定よりうまくいっていない可能性があります。

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