【都知事選のカオス】「けなし賃」「選挙はがき横流し」で金儲けしていた者も…ポスター掲示場ジャックよりもヤバい候補者の悪業

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 選挙戦で混戦が伝えられることは多いが、現状は混沌(カオス)というほうが正確ではないか――。6月20日に告示された東京都知事選は56人という過去最多の立候補者が出るなど、前代未聞のトピックが注目を集めている。

 前代未聞なのは立候補者数だけではない。全国各地の選挙をウォッチするのが趣味という選挙マニアで『ヤバい選挙』(新潮新書)なる著書もある宮澤暁氏は、現在、この選挙について「前代未聞のことがいくつも起きており、選挙史に残る重要な選挙になると思われます」と語る。以下、宮澤氏のレポート。

ポスター掲示場からはみ出した候補

 今回の都知事選では56人もの立候補者が出ました。しかし、都選挙管理委員会が用意したポスター掲示場は48人分しかスペースがなく、届出番号が49以降の候補は都選管からクリアファイルを渡され、これを用いて掲示場の板に画びょうなどで固定するように指示されたのです。このようなことは今までの選挙ではなかった前代未聞のことでした。

 このようなクリアファイルの候補者は著しく不利な状況になりました。ポスターを貼る手間が他の候補者と比較して大いにかかっただけではありません。選挙戦5日目の6月25日、都庁近辺にあったポスター掲示場は、クリアファイルの候補者のポスターがきちんと見ることができない状態でした。

 この状態は、候補者全員を平等に扱わなくてはいけない選管が、特定の候補たちに対して著しい不利な状況を与えていることになり、公正な選挙という観点からみると非常に問題があります。

 都選管の不手際、怠慢が指摘されています。告示日当日に何の前触れもなく多数の候補が来たのであれば、予想外のことが起きて対応できなかったとも考えられます。

 ただ、実際は告示日の数日前から、立候補の事前審査を終えた人が50人を超えて、掲示場の枠をオーバーしていました。急いで枠を増設できなかったのかという指摘は可能でしょう。なお、区市町村レベルの選管では増設を想定していた節があり、一部のメディアでは、都選管に対して告示前に何度も増設の問い合わせをした区選管があることが報じられています。

ポスター掲示枠の「販売」

 すでにニュース等でも報じられている通り、ポスター掲示場の掲示枠の「販売」という信じられないことも起きています。

 NHKから国民を守る党(以下、NHK党と表記)と関連する政治団体は、1人しか当選できない選挙なのにもかかわらず、24人もの候補者を擁立しました。そして、同党に一定の金額(6月24日現在では1口2万5000円)を寄付すれば、1口につき1か所のポスター掲示場で、NHK党および関連団体候補24人分の枠に好きなポスターを掲示可能としています。

 選挙ポスターは、サイズや掲示責任者、印刷責任者の記載に関する規定があるものの、他候補の応援や虚偽内容でなければ基本的にポスターの内容に制限がないとされています。そのため、候補者とは無関係の内容のポスターを貼ることができるのです。

 NHK党の行為は「寄付」の体裁をとっているものの、ポスター掲示枠の「販売」とみなされてもおかしくないものとなっています。都知事選に立候補するための供託金は300万円なので24人分で7200万円ですが、ポスター掲示場は都内に約1万4000か所あるので、それなりに「販売」できれば利益が上がるという算段です。

 仮に1万4000口売れれば3億5000万円なので、供託金は十分にペイできます(ただし、赤字であっても、いくらかは金が得られるうえに、このことが話題になることで党の宣伝にもなるという算段もあると思います。また、同党はビジネスとして行っているのではなく、掲示場設置に税金を費やす無駄を示すためにこの手法を取ったと主張しています)。

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