「逃げ恥」も教材に…名門男子校ではどんな性教育が行われているのか
性教育やジェンダー教育で人権意識が育つ
性別役割意識の解消も男子校教育のトレンドである。昨今の私立男子中学校の入試では、ジェンダーをテーマにした課題文が出題されることも多い。
星野源と新垣結衣が主演の人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)を教材に、ジェンダー平等について教える授業もあった。2019年の東大入学式で社会学者の上野千鶴子氏が行った祝辞を教材にしてフェミニズム的観点を学ぶ授業もあった。期末試験で、萌えキャラを使った架空の広告の問題点を記述させた学校もあった。
いまだに女子に対して「女の子の学歴はほどほどでいい」とか「女の子はバカな振りをしておいたほうが得」というような、差別的圧力がかけられることがある。そこでいま、女性だってどんどん社会の天井を押し上げていっていいというメッセージが歓迎されていることは、朝ドラ「虎に翼」(NHK)への反響からも顕著である。
一方で、男子に対しては「少しでも偏差値の高い学校に行って競争に勝ち抜け」「将来は家族を養わなければならない」などのプレッシャーが強い。そこで男子校においては、「バリバリ稼いでぐいぐい引っ張るだけが男じゃない」「感情的になってもいい。弱音を吐いてもいい」というメッセージがくり返し伝えられていた。「男らしさ」の呪縛から解き放つ意味がある。
SRHRや性的多様性を含む包括的性教育を学ぶこととは、結局のところ人生観教育であり人権教育なのである。そう考えると腑に落ちることがある。
性教育や同性婚に反対するひとたちが言う「寝た子を起こすな」は、性に対する興味をくすぐるなとか、同性愛に目覚めさせるなという単純な話だけではおそらくない。その言葉の裏にある真のメッセージは「自分たちに人権があるということを市民に気づかせるな。気づかれると統治しにくくなる」である。
なるほど。だからそのような思想をもつ宗教団体と統治権力の利害が一致するのだ。
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