冗談半分に楽しんでいたはずが…いつの間にかのめり込んでしまう「オカルト好き」の世界(古市憲寿)
オカルト好きというと、どんな人を想像するだろうか。前髪を長く垂らした陰気な不気味ちゃん? 魔女のようなファッションに身を包んだ不思議ちゃん? 確かにそういった特異な人もいるだろうが、実際のオカルトやスピリチュアル好きというのは、もっとカジュアルな層が多い。
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僕の友人にもオカルト好きがいる。彼女はそれが特異な趣味だと分かっている。だからオカルトを「冗談ですよ、分かってますよ」という顔で語る。何でも一部オカルト界隈的に2024年というのは重要な転換点らしいが、それも照れ笑いしながら教えてくれた。
その意味でオカルトというのは、プロレスに似ている。「ネタ」だと思って冗談半分に楽しんでいると、いつの間にか「ベタ」にのめり込んでいたりする。
日本を代表するオカルト雑誌に「ムー」がある。1979年に創刊し、40年以上の歴史を持つ。バックナンバーを読んでいたら、とんでもない記事を発見してしまった。2000年3月号に掲載された角川春樹さんのインタビュー記事である。
角川さんは「ムー」に終始ご立腹だ。何でも昔はよく「ムー」を読んでいたが、最近はあまりにも荒唐無稽だという。お怒りなのは「グレイは河童だった」という記事。グレイとは当時流行していた宇宙人である。
まあ、荒唐無稽が「ムー」の持ち味なのだから、それを真面目に怒っても仕方ないのにと思いながら読み進めていくと、どうやら角川さんの怒りポイントはそこではなかった。そのまま引用する。「グレイが河童なわけがないんです。私は何度もグレイとコンタクトしていますから、よくわかっている」。何とグレイをよく知る身として、角川さんは怒り心頭なのだ。
3歳の時からUFOを目撃してきた角川さんだが、グレイと初めてコンタクトできたのはハワイでだった。「ショッピングセンターに行き、石を買え」という指令を受けた。これだと直観した水晶には、グレイからのメッセージが届くようになった。水晶がピカピカと光るのだ。
そして目を瞑った瞬間、彼らは姿を現した。7人のクルーで、弘法大師ほどの高い精神レベルにあった。いわく「地球に近づく異星人には気を付けなさい。彼らは邪悪な存在だからです。私たちは、そんな彼らを監視しています」。というわけでグレイが河童のわけがない。「自明の理」だという。河童の精神レベルが高い可能性もあるのではと考えてしまったがそれはおこう。グレイを「ネタ」にしてしまった「ムー」に、角川さんは「ベタ」に熱弁を振るう。その「ベタ」にはただならぬ迫力があった。
角川さんによれば、すでに地球は「5次元に上昇している」。21世紀には人類も5次元に上昇し、超人類に生まれ変わるという。残念ながら2024年の世界では戦争が続き、きな臭い雰囲気が漂う。もし世界大戦ともなればグレイは人類を助けてくれるのだろうか。有事には「ネタ」にも「ベタ」にも頼りたくなる。