3期目入りの「モディ首相」は台湾に接近…印中対立激化で大規模軍事衝突の可能性も

国際

  • ブックマーク

インドの統計精度を疑う声

 インドの株式市場は相変わらず好調だ。6月中旬、株式市場の時価総額が5兆ドルを超えた。4兆ドルから5兆ドルに達する期間はわずか半年。これまで5兆ドルの壁を突破したのは、米国と中国、日本、香港のみだ(6月18日付ブルームバーグ)。

 4日の総選挙の結果を受けて株式市場は一時下落したが、モディ政権が3期目入りを果たしたことで再び上昇基調に転じている。好調な株価を支えているのは、主要国の中で最も高い経済成長率だ。

 インド準備銀行(中央銀行)は7日、今年度の経済成長率見通しを従来の7%から7.2%に引き上げた。インド政府は5月末、昨年度の経済成長率は8.2%だったと発表しており、当分の間、高成長が見込まれると言われている。

 だが、インドの統計精度を疑う声は根強い。特にモディ政権下で実績が誇張されてきたとの見方も出ている(6月22日付日本経済新聞)。

 統計の精度以上に問題なのは、高成長にもかかわらず失業率が改善しなかったことだ。2014年に首相となったナレンドラ・モディ氏はインドの国内総生産(GDP)を2倍にしたが、2022年度の失業率は5.4%と政権発足前の4.9%から上昇している。

「人口ボーナス」期を無駄にする恐れ

 国民が最も期待を寄せる失業問題に応えることができず、モディ政権は厳しい審判を受けたわけだが、今後、事態を好転させることができるのだろうか。

 モディ政権は一定以上の年収がある人々の所得減税を検討している(6月17日付ロイター)が、求められているのは供給サイドの構造改革だ。

 雇用創出力が高い製造業が十分に育っていないため、インドは今後30年程度続く見込みの人口ボーナス(全人口に占める生産年齢人口の比率が上昇することで経済成長が促される現象)期を無駄にする恐れがあるとの懸念が生じている。

 失業問題を解決するには、競争力の高い産業を育成することが急務だ。だが、モディ政権は2015年頃から3分の1の貿易品目の関税率を引き上げ、特に履物・繊維・家具などの競争力のない産業を強く保護している。この路線から一刻も早く脱する必要がある。

 雇用吸収力が高い中小企業の育成も大事だ。中小企業向け金融は発達しておらず、税制面でも不利な状況に置かれていることから、インドの非農業部門の雇用における中小企業の比率は約4割と世界平均から見てかなり低い水準にある。

次ページ:経済改革路線への復帰が必須

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。