【全米女子プロ】「元天才少女」が勝てない日々を乗り越え… スポンサーなしで優勝したエイミー・ヤン

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「ゴルフは自分との戦い」

 18番グリーンには選手仲間が大勢駆け寄り、ヤンをシャンパン・シャワーで祝福。ヤンの無印の白いバケットハットと赤いシャツはびしょ濡れになってしまったが、彼女の静かな笑顔は長年の努力がようやく報われたことを実感する安堵と喜びに溢れていた。

 故障に泣かされ、メジャーで勝てない日々がレギュラー大会でも勝てない日々に変わり、スポンサーも離れていった中、それでも諦めず、自分を信じて前進し続けてきたヤンの悲願がようやく成就した。

「私は幼いころからたくさんのグレート・プレーヤーを眺めながら育った。そして、偉大なる選手たちは、みなメジャー・チャンピオンになった。私もそうなりたいと思い、メジャー優勝を夢見てハードワークを積んできた」

 それなのに、なぜ自分はなかなかメジャー優勝を挙げられなかったのか。とうとうメジャーで勝利した今、ヤンはその答えにようやくたどり着いたという。

「ゴルフは自分との戦いであることを、私は今日、このコースで痛感させられた」

 ツアー屈指の優しく謙虚な人柄のヤンであっても、勝てない日々は知らず知らずのうちに、自分ではなく別の何かと戦いになってしまったと感じていたのだろう。

 見栄やプライド、勝利への渇望、賞金やポイントに対する欲望は、選手なら誰もが抱き、意識するもの。だが、そうしたものを見ているうちは勝てないことに気づいたヤンは、このサハリーCCでは自分だけを見つめ、自分自身と戦った。

 キャリア17年目にしてようやく掴んだ初めてのメジャー・タイトルは、ヤンが自分との戦いに打ち克った「戦利品」だった。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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