【全米女子プロ】「元天才少女」が勝てない日々を乗り越え… スポンサーなしで優勝したエイミー・ヤン

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「彼女ほど素敵なゴルファーはほかにいない」

 だが、「ヤンはどんなときも笑顔だった」とツアー仲間たちが証言している。

 韓国出身の選手はもちろん、ニュージーランド出身のリディア・コー やカナダ出身のブルック・ヘンダーソン 、米国出身のリンディ・ダンカンらも「エイミーはいつも他の選手のことを気にかけ、誰かの助けになりたい、役に立ちたいと願っている」「彼女ほど素敵なゴルファーはほかにいない」と絶賛。「自分の辛さより他人の辛さを感じ取り、手を差し伸べる優しい人柄だ」と語っていた。

 勝てない日々の辛さを顔には出さず、黙々と練習に精を出していたヤンは、とりわけ小技を磨いていた。その成果が形となって表れたのが、昨年11月のCMEグループ・ツアー選手権で挙げた通算5勝目だった。

 とはいえ、その勝利から一気に好調に転じたというわけではなく、今季も予選落ちや下位フィニッシュが目立っていた。全米女子オープンでも予選落ちを喫したばかりだった。

「最も長い18番だわ」

 それでも笑顔で挑み続けるヤンを、長年の相棒であるキャディのジャン・マイアリングが支えていた。彼いわく、「エイミーはとても純粋で控えめな人柄だが、優勝争いに絡んでチャンス圏内につけ、彼女の心技体が噛み合いさえすれば、そこから先はオートクルーズ(自動運転)のように勝利に向かって突っ走ると僕は信じていた」。

 そんなキャディの読み通り、全米女子プロに臨んだヤンは磨きをかけた小技とパットが噛み合い最終日を単独首位で迎えた。一時は2位を7打も引き離したが、16番のボギーに続き、17番のパー3ではティショットを池に入れてダブルボギー。2位と3打差で迎えた最終ホール。ヤンはキャディと並んで歩きながら、こう呟いたそうだ。

「この18番は、キャリアで最も長い18番だわ」

 しかし、人生の長く険しい道程を辛抱強く歩いてきたヤンは、「キャリア最長」と感じた72ホール目をしっかりパーで収めて切り抜け、3打差を維持したまま悲願のメジャー初優勝を達成した。

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