【全米女子プロ】「元天才少女」が勝てない日々を乗り越え… スポンサーなしで優勝したエイミー・ヤン
KPMG全米女子プロゴルフ選手権(6月20~23日=現地時間 )で34歳にしてメジャー初勝利を挙げた韓国出身選手、エイミー・ヤンの物語を紹介したい。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
【写真】シャンパンシャワーでびしょ濡れのエイミー・ヤン。服の中に突っ込まれても弾ける笑顔
日本勢の活躍続く
女子ゴルフのメジャー大会といえば、全米女子オープン(5月30日~6月2日=同前 )で笹生優花と渋野日向子がワンツー・フィニッシュを決め、トップ10に日本勢が5名も食い込む大活躍が披露されたばかり。
そして先週はサハリーCC(ワシントン州)で開催されたKPMG全米女子プロゴルフ選手権で、再び日本勢が目覚ましい活躍を見せた。山下美夢有 が2位タイ、渋野と西郷真央 が7位タイと、今回は3名がトップ10入りを果たした。
2位タイになった山下は、五輪ランキングでは笹生に次ぐ日本勢の2番手に浮上し、パリ五輪への切符を掴み取った。
日本の女子選手たちの実力は確実に世界レベルに達しつつあり、持てる力を檜 舞台で存分に発揮する強いメンタルも兼ね備えている様子である。今後、渋野、笹生に続く日本人メジャー・チャンピオンが誕生する可能性、あるいは、渋野や笹生がさらなるメジャー優勝を挙げる可能性は大いに高まりつつある。
そうした中、今回紹介したいのは、世界レベルの日本勢を抑えメジャー初勝利を挙げた韓国出身のエイミー・ヤンだ。彼女は今大会を、帽子にもゴルフバッグにもスポンサー契約がない「無印」状態で戦い抜いた。
勝利に手が届かず、忘れ去られそうに…
両親の影響で10歳からクラブを握ったヤンは、2006年、16歳の時、アマチュアながら欧州女子ツアー(LET)の大会を制し、「天才少女」と呼ばれて世界のゴルフ界を驚かせた。
その年の末にプロ転向したヤンは、2008年6月にも同ツアーで勝利し、優勝賞金の全額を中国で起こった大地震の被災地へ寄付したことで、再び世界のゴルフ界を驚かせた。
同年秋には米LPGAのQスクール(予選会)に初挑戦して一発合格。当時のリーダーボードを見ると、トップ合格はステーシー・ルイスで2位がヤン、4位タイには日本の大山志保 、7位タイにはミッシェル・ウィ。そんな面々と「同期」であることは、ヤンがきわめて長い間、LPGAで転戦していることを示している。
2009年からLPGAに参戦したヤンは、13年に初優勝を挙げると、15年、17年、19年にも勝利して通算4勝の実力者となった。しかし、メジャー大会では何度も優勝争いに絡んだが、勝利にはどうしても手が届かないまま歳月が流れた。
趣味のロッククライミングで肩を負傷してからは、プロゴルファーとしてのキャリアの終焉が頭をよぎることも多かったそうだ。
「天才少女」と呼ばれ、鳴り物入りで米LPGAにやってきたヤンは、長い間、「メジャー・タイトルなきグッド・プレーヤー」と呼ばれていたが、2019年を最後に勝利から遠ざかり、そんな称号さえフェードアウトし、忘れられた存在となりつつあった。
スポンサー企業からも徐々に見放され、帽子からもゴルフバッグからもロゴマークが消え、スポンサー契約のない「無印」状態。スポットライトが当たらなくなった「元天才少女」の勝てない日々、注目されない日々は、きっと辛く長い4年間だったに違いない。
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