NHK“キングメーカー”がいなくなり、初の「女性会長」が現実味 候補は「女子アナ」三羽がらすの一人

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黒崎会長誕生の環境は整う

 生え抜き会長を望む声も黒崎氏の背中を押す。会長はアサヒビール元社長の故・福地茂雄氏が2008年から11年まで務めたあと、5人連続で外部から招かれているが、そろそろ生え抜きが就任すべきだという声が局内外にある。外部からの会長だと放送と組織を把握するまでに時間がかかってしまう。会長任期は1期3年しかない。

 また、外部から会長が招かれるようになった発端は、生え抜きで1997年から2005年まで会長だった海老沢勝二氏(90)、同年から08年まで会長を務めた故・橋本元一氏の時代にある。制作費の横領や報道局員が経済ニュースを悪用してインサイダー取引を行うなどの不祥事が続発したのだ。そのため、外部から会長を招へいしたことにより、綱紀粛正については限定的ではあるものの、一定の成果が上がっている。

 故・安倍晋三元首相の盟友でNHKのキングメーカーだった葛西敬之・JR東海会長が、2022年に他界したことも生え抜き会長誕生の現実味を高めている。葛西氏の存命中はNHK会長人事に強い影響力を持ち、生え抜きではなく自分の知る財界人を推すことが多かった。

 前会長の前田晃伸・元みずほフィナンシャルグループ社長・会長(79)もそう。安倍氏と葛西氏を中心とする経済人の親睦会「四季の会」のメンバーだった。

 実務面でも黒崎氏の会長就任にはプラス面があるはず。テレビ離れが猛スピードで進行しており、2023年度のプライム帯(午後7~同11時)のPUT(総個人視聴率=テレビをリアルタイムで観ている人の割合)は3年前より4.5%も落ちた。

 落ちたPUTは6月3日放送のNHK「鶴瓶の家族に乾杯」(月曜午後7時57分)の個人視聴率4.2%とほぼ一緒だから、大きな数字だ。特に若者と女性のテレビ離れが著しい。女性目線が加えられたテレビ局改革が求められている。

 理事就任後の黒崎氏は広報統括と人事・労務統括補佐を担当している。広報は民放もNHKもエリート部署の1つ。局内の良い情報も悪い情報も全て入ってきて、番組も組織も全容が把握できるからだ。

 半面、広報は汚れ仕事でもあり、難しい。不祥事で過度に批判されることを避けるため、マスコミ側と険悪な関係にならないようにするのも役割だが、それでいてマスコミ側に接近しすぎると癒着と批判される。スキャンダルに発展しかねない。黒崎氏にとって広報統括役は試金石になる。

 民放の役員報酬は正確には掴みにくいが、NHKは放送法によって理事以上の報酬の公表が義務付けられている。黒崎氏の月額報酬は149万円。期末報酬(夏と冬のボーナス)はそれぞれ209万円。年間報酬は2206万円である。

高堀冬彦(たかほり.ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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