NHK“キングメーカー”がいなくなり、初の「女性会長」が現実味 候補は「女子アナ」三羽がらすの一人
女性重用が進むNHK
6月20日時点の民放の女性役員(非常勤、社外、役員待遇は除く)は日本テレビが12人中1人、テレビ朝日が15人中2人、TBSが17人中1人、フジテレビが15人中1人、テレビ東京26人中4人。一方、NHKは稲葉延雄会長(73)を含めた理事以上12人のうち女性は3人。女性の比率が最も高い。
また、民放はナンバー2の副社長や専務にも女性が就いたケースもないが、NHKはやはりアナ出身の永井多恵子氏が副会長を2005年から08年まで3年間務めた。評価も高く、局外有識者の間では「会長に昇格させるべき」との声が上がった。
一方、黒崎氏は若さも強み。NHKの理事以上の平均年齢は現時点で61.8歳で、56歳の黒崎氏は最年少。会長は70代前半での就任が目立つから、チャンスが15年前後ある。
黒崎氏はアナ以外のキャリアも申し分ない。2017年にチーフアナウンサーからアナウンス室副部長となり、管理職を初経験したあと、翌18年には組織の中枢である編成局計画管理部(現・メディア戦略本部)の副部長になった。
この部署はNHK全体の事業計画を実行に移す重要セクション。局内の各部署から精鋭ばかりが集まる。この部署を経験すると、上級幹部への道が約束されたようなものだとされる。黒田氏も2019年に計画管理部の専任部長を経験後、翌20年に栃木県内の拠点である宇都宮放送局の局長に転出した。
地方放送局の局長になると、全国番組や同ニュースの地域部分の発信から、ローカル番組の制作、受信料徴収の促進、職員の管理まで幅広く手掛ける。NHK本体の局長か地方放送局長を難なく勤め上げると、理事候補の仲間入りとなる。
黒崎氏は2023年にNHK本体に戻り、アナウンス室専任局長に就任。今年3月からアナウンス室長を務めていた。
黒崎氏にとってはNHK全体の男女不平等解消の機運も追い風。まず多くの番組で出演者を男女同数にしようと努めている。連続テレビ小説「虎に翼」もそうだ。
メディアに出演する男女比率を平等にしようと、英国BBCは2017年に「50:50 The Equality Project」というプロジェクトを始め、NHKも2021年から参加している。世界30カ国のテレビ局が同調しているが、日本から加わっているのはNHKのみである。
NHKの職員数は約1万人で、女性は約2350人(約23%)に過ぎないものの、女性比率は上昇一途。近年の新卒採用は年間200~300人だが、内訳が男女ほぼ同数だからである。
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