盗撮オフ会に潜入、アップル社へ“直撃”…NHKが「子どもの性被害」問題で大奮闘のワケ

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NHKの姿勢に背景に“反省”がある

 企業のトップに直接取材しようする辻記者の姿勢は、昨年のジャニーズ性加害問題の大きなきっかけをつくったBBCのアザー記者にも通じるものがある。日本のメディアが忘れかけているジャーナリズムの大切な姿勢でもある。

 日本でも情報流通プラットフォーム対処法が5月に改正され、巨大プラットフォームに対する権利侵害対応が少しずつ進められている。しかし、児童ポルノは「表現の自由」「通信の秘密」などとの兼ね合いで、規制が難しい現状がある。

 NHKとTansaが実施した共同の調査報道は、かつてないスケールでスリリングなものだった。SNSで広がり、被害者が数多く出ている悪質な児童ポルノの闇。巨大プラットフォーム企業に対応を促さない限り、なかなか改善に向かわない実態もわかった。

 日本社会は「子どもの性被害」に対して鈍感であることを識者が指摘していた。それは昨年の旧ジャニーズ性加害問題へのメディアの対応の遅さとも共通する背景ともいえる。

 一連の番組は、NHKが5年前に立ち上げたサイト「性暴力を考える」がベースになっている。そのうえで、ジャニーズの性加害問題への反省の意識が加わっているのではないか。ジャニーズ問題では、テレビや新聞などが積極的に取材・報道しようとしなかった「マスメディアの沈黙」も強く批判された。NHKも、検証番組で同様の被害が日本で二度と生じないよう、「子どもへの性暴力」は重大な人権侵害として報道に力を入れていくことを誓っている。

 児童ポルノなどのSNSの闇の底はとてつもなく深い。報道機関の垣根を超えて少しでも実態を明らかにする取り組みをこれからも続けてほしい。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

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