盗撮オフ会に潜入、アップル社へ“直撃”…NHKが「子どもの性被害」問題で大奮闘のワケ

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ネットパトロールする市民団体との連携

 その一つが、市民のボランティアグループとの連携だ。報道機関がいろいろな団体と連携すること自体は珍しくはないが、今回NHKは、盗撮や児童ポルノのネット上の被害について熟知する市民団体と積極的に連携することで、新しいスタイルの調査報道を試みていた。

 ネット上で子どもの性被害を探し出して通報する活動をしている「ひいらぎネット」の永守すみれさんに協力してもらい、取材班はSNS の盗撮コミュニティへの「潜入取材」を試みる。「子ども好き」の架空の設定のアカウントを作り、「違法な動画・画像を求めない、送らない、犯罪を誘発しない」など弁護士の助言に従った厳格なルールの下でそれを運用、盗撮コミュニティに潜入していった。コミュニティは様々な隠語が飛び交う。盗撮者を意味する「鳥師」、自分で撮影した独自の動画・画像を指す「オリ」、スカートの中盗撮カメラをまたいだ映像は「逆さ跨ぎ」、生ビールの絵・パンの絵に“摘みました”は「生のパンツ撮影しました」といった具合だ。

 女子高生の盗撮動画と、個人を特定できる情報が併せて販売されているケースもあった。永守さんは、動画に写っている制服や建物などを分析し、被害者が通う学校や撮影された場所を絞り込んでいった。こうしたネット上の公開情報を元に調査報道を進める手法は“オシント”(OSINT=Open Source Intelligenceオープン・ソース・インテリジェンス、または Open Source Investigation)と呼ばれ、最近様々な報道機関で注目されている。永守さんの手法は、その初歩的なものといえるだろう。結果として、地元の学校や警察などに注意を喚起することができた。

身分を明かさずにSNSの盗撮コミュニティの“オフ会”に潜入取材

 取材班は、メンバーが実際に顔を合わせる“オフ会”にも参加し、隠しカメラでその様子を撮影していた(この取材も弁護士と相談して「聞き役に撤する」というやり方に終始していた)。取材班の一人が、30代の会社員や20代のフリーターなどの参加者と盗撮経験などについて語り合う場面がある。

(30代主催者)
「(盗撮した少女に対して)こんな恥ずかしいもの見られて大丈夫?っていう征服感みたいなものがある」

(30代会社員)
「自分だけ見てやった感もでかいですね」

 主催者は既婚者で、捕まることを恐れこれまで何度もやめようとしたという。

(30代主催者)
「朝ピンポンが鳴るんじゃないか。警察が来るんじゃないか。宅急便のピンポンも怖くなっちゃう。やめたいですよ、やめられるなら、家庭もあるし、バレた瞬間…」

(20代フリーター)
「家庭が終わりますよね」

(30代主催者)
「機材何回も捨てているし。スマホも捨てている。でもまた買っちゃうんですよ」
「目の前にJKが通りました、この子、生確定ですってなった瞬間にもう違うスイッチがパチンと入るんです」

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