女性検事は容疑者に「社長、いらっしゃーい」、男性検事は「検察、なめんなよ!」…冤罪事件「国賠訴訟」で判明した大阪地検特捜部検事たちの呆れた所業の数々

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 東証スタンダード上場の大手不動産会社「プレサンスコーポレーション」(大阪府大阪市)の創業者で代表取締役だった山岸忍氏(61)が、2019年に業務上横領の容疑で大阪地方検察庁特捜部に逮捕された事件。のちに冤罪が明らかになり、山岸氏は国家賠償訴訟を起こした。6月11日、大阪地裁で行われた証人尋問では、大阪地検特捜部の4人の検察官が出廷、取り調べ映像が法廷で公開された。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

プレサンス冤罪事件の

 大阪市天王寺区の学校法人「明浄(めいじょう)学院」の土地取引をめぐり、法人の理事になろうと画策していた女性(66)が、2016年4月、プレサンス社の山岸氏から18億円を借り入れて理事に就任する。理事長に昇格して経営権を持つと、学校の土地を21億円で売却し、山岸氏から借り入れた18億円を返済した。

 大阪地検特捜部は19年12月、「法人の土地を勝手に売却し、私的に流用した」として業務上横領罪の容疑で理事長らを逮捕。この際、山岸氏は「理事長が横領することを知りながら融資した」との容疑で共犯とされた。すでに理事長は有罪が確定している。

 しかし、山岸氏は理事長個人ではなく学院に対し融資を認めたが、横領の意図は知らなかった。ところが、特捜部は「社長は横領を知りながらマンション建設の土地が欲しくて金を貸した」と見立てた。

 そして、山岸氏の部下にあたるプレサンス社のA氏(59)から「見立て通り」の供述を取ろうとする。「社長には横領計画を伝えていなかった」と主張していたA氏は、取り調べの中で様々な脅しに屈し「社長は知っていた」と供述してしまう。

 大阪地裁は21年10月、大阪地検の不当捜査を糾弾、A氏の証言を否定し、山岸氏に無罪判決を下す。検察は控訴できなかった。

「大罪人ですよ」と迫る検事

 6月11日、法廷ではA氏を取り調べた田渕大輔検事(52)が不当な言動で迫っている音声の一部が流れた。

「あなたは、プレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ。会社から今回の風評被害を受けて非常な営業損害を受けたとかになって(損賠賠償請求をされて)賠償できますか。10億や20億では済まないですよね。それを背負う覚悟で話していますか?」と田渕検事はA氏に迫る。

 A氏が小声で「背負えません」と答える音声からは、不安に陥ってゆく様子がありありと伝わる。

 特捜部はこうした取調べを行う中で、A氏から「山岸社長は横領を知っていた」という主旨の調書を取った。

 他にも、山岸氏の代理人弁護団が入手した映像記録では、田渕検事は「検察舐めんなよ」などとA氏に大声で迫ったり、机を叩いたりしている。しかし、法廷で公開された映像にはこうした部分は含まれなかった。

 山岸氏は自身と元部下を含む3人への取り調べの音声や映像の提出を求めたが、検察に拒否され、大阪地裁に提出命令を申し立てた。地裁は18時間分の音声と映像の提出を国に命じたが、検察は抗告し、大阪高裁は50分に制限する決定を出した。山岸氏側は最高裁に特別抗告している。

 いずれにせよ、民事裁判で検察特捜部の取り調べ映像が証拠として法廷に流れたのは、日本の司法史上初めてだった。

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