逮捕者が相次ぐ鹿児島県警 情報漏えい事件、内部情報を受け取った記者本人が明かす騒動の裏側

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「95年入庁」の呪い

 目下、警察庁内ではある「因縁」を指摘する声が上がっているという。22年、奈良市内で安倍晋三元総理が銃撃されて死亡した事件の発生当時の奈良県警本部長で、事件後に辞職した鬼塚友章氏。彼も野川本部長と同じ95年入庁なのだ。

「そのため、“95年入庁組は呪われている”と言われているのです。現職警察官による盗撮事件は組織犯罪でも何でもないので、『泳がせよう』などという指示は普通あり得ない。そこに隠蔽の意図があったかどうかは今後の捜査次第ですが、前生安部長が本部長を告発する、という事態になっているのは本部長のガバナンスが利いていない証拠。野川本部長の責任が問われるのは間違いありません」(同)

 思惑が複雑に入り組んだ今回の事件。その構図をクリアにするためには、次の点を深く掘り下げる必要がある。本田氏から県警の内部情報を受け取った“とある記者”とは何者なのか。県警は本田氏による情報漏えいをいかにして把握したのか。これらの疑問を解消するために避けて通れないのが、福岡を拠点にするネットメディア「ハンター」の存在である。

“とある記者”の正体

 まず、“とある記者”とは、「ハンター」に鹿児島県警に関する記事などを寄稿していたライターの小笠原淳氏である。

 小笠原氏が語る。

「問題の資料は4月3日、私が主に執筆の場にしている北海道の『北方ジャーナル』という雑誌の編集部の住所に私宛てで送付されてきました。郵便料金が10円足らなかったので、その分を私が払い、受け取りました。消印の日付は3月28日。私に資料を送ってきたのは、『ハンター』に名前を出して鹿児島県警の記事を書いていたからでしょう」

 その場で開封した資料には〈闇をあばいてください〉とあり、先に触れた枕崎署員による盗撮事案や、別の現職警察官による「巡回連絡簿」を使ったストーカー事案の詳細が記されていた。また、情報源をカムフラージュするためか、〈本件問い合わせ〉先として、県警の前刑事部長の名前と住所、電話番号も付されていた。

「これだけ具体的なことを書いている以上、ウソではないだろうなとは思ったのですが、私は普段は札幌にいるのですぐには動けない。そこでこの資料を『ハンター』と共有しておこうと思ったのです」(同)

 後編「『隠蔽指示はあったとみるべき』 逮捕者が相次ぐ鹿児島県警、情報漏えい事件の『キーマン』が明かす県警の“不審な動き”」では、「ハンター」代表が明かしたガサ入れの模様と、その後の県警の“不審な動き”について報じている。

週刊新潮 2024年6月20日号掲載

特集「本部長が不祥事隠蔽 『鹿児島県警』が放つ腐臭」より

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