イクメン夫が一転、中学時代の同級生と不倫→同棲 それでも50歳夫が「自分の居るべき場所がよく分からない」と漏らしたワケ
友情なのか恋なのか
翌日、佑香さんに連絡した。それからは毎日のようにLINEで会話をかわし、1週間後、ふたりはようやくレストランで向かい合った。
「LINEでは聞けなかったんですが、会って彼女の今の状況を尋ねました。20代で女の子をふたり産んだからふたりとももう成人して独立している。夫とはただの同居人ねと一瞬、冷たい表情になったのを僕は見逃さなかった」
それ以降、友情なのか恋なのかわからないままに、ふたりは月に2,3回は会うようになった。彼女は、自分も仕事を続けてきたし、「もはや家庭内別居」だという夫のことは気にする必要がないのと明るく笑った。
数ヶ月後、佑香さんから「今度、週末にゆっくり会えない? つきあってほしいところがあるの」と連絡があった。もちろんYESと返事を送った。
「その日、彼女は車で来ていました。つきあってほしいと言ったのは都内のとあるマンションだった。『実はここ、姉のマンションなの』って。両親はすでに亡く、たったひとりのお姉さんも1年前に亡くなったのだそう。お姉さんはずっと独身だったので、住んでいた古いマンションを遺産として相続した。1LDKの古いマンションだから、高く売れるわけではないし、なんとなくそのままにしてあると言っていました」
彼女がそこに博喜さんを連れてきたのは、姉の唯一の趣味である古いジャズのレコードがあるからだった。再会して話すうち、彼はジャズが好きだと言った佑香さんに合わせるように「オレも」と言ってしまったのだ。もちろんジャズは好きなのだが、マニアというほどではなかった。
「それでもそこにあるレコードを佑香と一緒に聴いてみたら、なんともいえない気持ちになりました。忘れ物が見つかったような。彼女との間にある空間の色が変わった。自然と寄り添い抱き合いました」
もっと若いときに再会したかったと佑香さんはつぶやいた。今からでも遅くないよと彼は言った。
マンションで半同棲、妻の瑠璃さんは…
「あれから2年たちます。いろいろ考えた末、僕と佑香は今、そのマンションで半同棲しています。瑠璃にはバレています。『離婚したほうがいいなら、そう言ってほしい』と伝えたんですが、瑠璃は『私はあなたとは離れたくない。子どももいるのよ。考え直して』と。でも佑香と離れることはできなくて。去年の秋だったか、佑香がそのマンションで『私、ここに越すことにしたの。たまには来てくれる?』と言いだしたんです。ダンナさんはどうするのと言ったら、もういい、別居するし離婚になってもかまわないと。彼女がそこまで言うなら、『たまにじゃなくて一緒に住んでもいい?』と」
佑香さんはそれからすぐ部屋を片づけてひとりで越した。博喜さんは今年になってから、身の回りの物を持って家を出た。7歳になる息子には「おとうさんは仕事で、これからはあまり帰ってこられないかもしれない」と嘘をついた。出ていく彼を、息子は黙って手をひらひらさせて見送った。妻は玄関には来なかった。
「月に2回くらいは息子に会いに戻っています。でも妻は僕が行くと、別の部屋にこもって出てこない。息子も変だと勘づいています。だから最近は息子を遊びに連れ出すようにしました。そして家まで送って僕は佑香のところに戻る」
こんな生活がいつまで続くのだろうと博喜さんは思う。瑠璃さんを紹介してくれた伯母はもう亡くなっているが、草葉の陰で怒っているだろう。息子が生まれたとき、あれこれサポートしてくれた両親は今もふたり元気に暮らしているが、今回の件は親には言えずにいる。瑠璃さんは親に“密告”はしていないようだ。そんなことをするタイプではないのを博喜さんもわかっている。
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