ギャンブル依存に借金苦、闘病生活までネタに…67歳「オバ記者」が明かす「ライターとして最大の危機」だった瞬間

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ロールモデル

 60歳以降の人生はキツイ。雇用を延長してもらっても、体力的にもはや最前線でガンガン働けるワケでもなければ、どことなく「会社にお世話になっている」という感覚は禁じ得ない。若手従業員は孫に近い年齢だったりもするわけで、「あぁ、自分の才覚と名前だけで勝負できるキャリアを形成しておくべきだった」なんてことも思う。

(全2回の第1回)

 だからこそ私(ネットニュース編集者・中川淳一郎・50歳)も将来に対して不安を持っているが、ひとりのロールモデルがいる。「オバ記者」として知られるフリーライターの野原広子さん(67歳)だ。ここ数年、その異例の経歴が注目を浴び、自身の主戦場である「女性セブン」のライター業務に加え、AERA、週刊SPA!、日刊ゲンダイでインタビューされるなど引っ張りだこ。

 15歳で靴屋の住み込み店員になり、茨城県の農業高校を卒業した後、上京してからは喫茶店のウエイトレスのバイトなどで生計を立てる。20代前半でライターになり、現在キャリアは約45年。途中、ギャンブル狂になったり、闇金に出入りしたり、貯金が一切ない破天荒な人生を送る。ライター業は着実にこなしていたものの、何しろギャンブルにカネを使ってしまう人生だったのだ。

一服の清涼剤

 その後も、ライターをしながら、ホテルの清掃バイトに励む様子をエッセイに書いたり、地元・茨城県選出の国会議員の秘書に抜擢されて、地元の子供達の国会案内をしたり、もう何が何やら分からない人生を送っていたらいつしか67歳になっていたという。趣味の「乗り鉄」やら自身の卵巣がん、母親の介護など、なんでもかんでもエッセイのネタにしていくこの生命力の強さこそ、オバ記者の真骨頂。挙句の果てには故郷で講演会を開催し、大勢の人がその話を聞きに来る。なんと羨ましい人生だろうか。

 私は2010年、小学館が運営する「NEWSポストセブン」の編集者になった。オバ記者の身体を張った体験記事やエッセイも含め、雑誌記事をウェブ用に編集し直す仕事をしていたのだが、この天真爛漫な笑顔とわがままボディに惹きつけられ、ある日「ご挨拶させてください!」と名刺を持ってオバ記者のデスクを訪ねた。

 以来、小学館では立ち話をする仲になり、多分、我々はフリー同士としては異例の仲の良さになったと思う。毎度相好を崩して「ねぇねぇ、中川さん聞いてよ」と喋りかけてくるオバ記者との立ち話は過酷な編集業務の間、一服の清涼剤のようなものだった。

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