根尾昂、藤原恭大、吉田輝星…「甲子園100回大会」のスターはなぜプロで苦戦? アマ時代から知るスカウトは現状をどう見ているのか

スポーツ 野球

  • ブックマーク

“金農旋風”が話題に

“甲子園のスター”がプロの世界で苦しんでいる――。2018年のドラフト会議で1位指名を受けた根尾昂(大阪桐蔭→中日)や藤原恭大(大阪桐蔭→ロッテ)、吉田輝星(金足農→日本ハム、現・オリックス)は、プロ入りから5年を経過したが、いまだにチームの主力になることができていない。【西尾典文/野球ライター】

 2018年といえば、大阪桐蔭が史上初となる2度目の甲子園連覇を達成したほか、金足農が夏の甲子園で次々と強豪を撃破し、決勝で大阪桐蔭と激突した“金農旋風”で、高校野球界が大いに盛り上がった。

 当時の盛り上がりと比べると、3人のプロ入り後の成績は物足りない。彼らが伸び悩む要因がどこにあるのだろうか。アマチュア時代からプレーを見ていたNPBのスカウト陣のコメントから探ってみた。

 最も“多難な道のり”を歩んできたのが根尾だ。入団当初は本人の希望もあってショートでプレーしていたが、守備に不安があり、外野手に登録が変更された。だが、2022年シーズン途中、投手との「二刀流」に挑戦することに。翌年は再びショートに戻り、シーズンが開幕すると、今度は投手に専念するになった。目まぐるしくコンバートを繰り返した。通算の投手成績は0勝0敗1ホールド、防御率2.91で、打撃成績は、打率.171、20打点、1本塁打と期待を大いに裏切っている。

素材は間違いなく“一級品”だが

 中日首脳陣の度重なる方針転換で、根尾の成長が遅れた。アマ時代の根尾を担当していた、他球団の関西地区担当スカウトは、以下のように話す。

「根尾は、投げれば140キロ台後半のスピードが出て、打っても飛ばす力はあり、素材は間違いなく“一級品”だと思います。ただ、ショートとして見ると、運動能力と肩の強さで何とかカバーしていましたが、細かい部分は(同学年で同じドラフト1位の)小園海斗(広島)と比較して、かなりの差がありました。一方、打撃面では、スイングは速いのですが、空振りが多い。最初は“おっ!”と思うんですけど、何度も空振りを繰り返すと“大丈夫か?”と不安になりますよね。(大阪桐蔭の)西谷浩一監督は、“根尾は不器用なタイプ”とは常々言っていました。入団当初から外野手、もしくは投手に専念させていたとしても、一軍の主力になるまで時間がかかることはある程度予想ができました。それにもかかわらず、何度もコンバートを重ねていては、苦労をしても仕方ないと思います」

 このスカウトが名前をあげた小園は、3年目から一軍に定着することができた。今年もチームを牽引する活躍を見せている一方、守備は、ショートではなく、サードを守る機会が増えている。それだけプロの世界で、ショートのレギュラーを掴むことは容易ではない。小園より守備力が劣る根尾が、ショートで成功できなかったのも当然といえそうだ。

次ページ:スカウトが見極めづらい“マイナス材料”

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。