急増する「大人の発達障害」 “幼児期のトラウマ体験”で傷ついた人を助ける“意外な存在”とは

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自分が自分の親になる

 実は、慢性的にトラウマ体験を受けてきた人の多くは、成人後も親、あるいは他者に対する「依存欲求」がまだ残っています。

 成人後に養育者との関係を断ち切り、折り合いをつけていると表面上は思っていても、心の底では依存欲求がくすぶっているというパターンもあります。ただ、この場合の依存欲求というのは「今の自分が高齢となった親の愛情を求めている」のではなく、「過去の自分が親の愛情を求めていた」と自覚する必要があります。

 幼少期に親から「よしよし」してもらいたかった、感情を受け止めてもらいたかった、でもそれはもう叶わないことなのだ……。その事実を受け入れ、依存欲求を断ち切り、自分で自分のアイデンティティを作っていくのです。

 そうしたプロセスのなかで、辛かった過去の自分に会いに行き「自分が自分の親になる」ことが求められます。クリニックの治療では、具体的なトラウマ体験の出来事を聞き出すことはありません。一方で、子ども時代はどんな気持ちで過ごしていたのか、本当は何を求めていたのか、何に傷ついていたのか、といった傷つきへの自覚を促します。

 そして、自分がその子の親だったら何をしてあげるのか、どんな言葉をかけてあげるのかを考え、今の自分が過去の自分を助けてあげるのです。

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 本記事は『トラウマからの回復』(扶桑社)より、一部を抜粋/編集してお伝えした。本書では、実際にクリニックに訪れた社会人女性「ハナさん」と医師とのカウンセリング風景などを通し、「複雑性PTSD」、「発達性トラウマ障害」の症状や診断基準を詳しく解説している。

『トラウマからの回復』(生野信弘著、扶桑社)

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生野信弘
1988年長崎大学医学部卒業、1995年同大学院修了。医学博士。同大学卒業後、長崎大学第二内科、佐世保市立総合病院で内科医長を務め、1998年にオーストラリア・モナッシュ大学の生化学・分子生物学科に2年間留学。帰国後、離島医療やホスピス緩和ケアに従事。2001年に精神科に転向し対人関係療法などを学び、現在は田町三田こころみクリニックで、過食症の対人関係療法とともに「発達性トラウマ障害」や「複雑性PTSD」などトラウマ関連疾患の専門外来を担当している。精神科専門医・指導医。

デイリー新潮編集部

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