急増する「大人の発達障害」 “幼児期のトラウマ体験”で傷ついた人を助ける“意外な存在”とは
対人関係の障害
「対人関係の障害」が生じると、人間関係を維持することや他者を身近に感じることに困難さを覚えます。
対人関係が難しいと聞くと「他者と衝突しやすい人」を思い浮かべるかもしれませんが、自己組織化障害の対人関係の障害では人間関係や社会との関わりを避けようとしたり、関心を示さないケースもみられます。
過去には「人と距離があるように感じる」「仲間はずれにされているように感じる」「人と感情的に近い距離を保つのが難しいと感じる」と訴えるかたもいました。
他者に対して交流を求めながらも関係を作れなかったり維持できなかったりして、結果的に他人と距離を取ってしまう。他者に対して無関心にも見えるこの状態は、ASD(自閉スペクトラム症)のかたにも当てはまり、これも発達障害とみなされるケースにつながります。
ひとまとまりの自分
人間には他の個体への近接(アタッチ)を通じて、安心感を回復・維持しようとする根源的な欲求があります。
アタッチメントは、不安や怖れなどの感情の乱れを自己と愛着対象(多くの場合は養育者)との間の関係性によって調節する仕組みともいえるのです。
トラウマ関連疾患は、乳幼児期にアタッチメントの形成が阻害された結果、神経系の発達が妨げられることで起こります。すなわち、トラウマ関連疾患を抱える多くの方は適応的ではないアタッチメント・スタイルが続いているのです。
トラウマ治療によって人格が統合されても、そのひとまとまりの人格はまだアタッチメントを知らない状態といえます。
さて、乳幼児期に得られなかったアタッチメントですが、成人後も治療の過程で、自力で得ていくことができます。それが「自分が自分の親になる」ということ。その手法の1つが「メンタライジング・アプローチ」です。
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