「お~い」に大谷翔平、「綾鷹」宇多田ヒカル… 緑茶飲料の新CM、逆効果だったタレントは

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販売数、多くが「変化なし」のなか…

 飲料メーカー関係者は、内情をこう話してくれた。

「各メーカーは、春のリニューアルに合わせ、タレントを使ったテレビCMを中心とする広告に力を入れるのが通例です。ドラッグストアやスーパーマーケットでは安売りが行われるため、それが販売数の増減を左右することも少なくはありません。だから定価販売が基本であるコンビニの売上が、価格ではない、"純粋"な人気をはかるバロメーターになると思うのですが……大手コンビニの販売数をみると、残念ながら前年差はほとんどないようで……」

 では、先に触れた商品の実際のコンビニの販売数はどうだったか。某大手コンビニ関係者が語る。

「各メーカーの今年と昨年の5月販売数を比べました。『お〜いお茶』は何も変わりませんね。『生茶』『伊右衛門』も前年差は、ほぼありません。『綾鷹』は、今年はコンビニ限定で他社の600mlを超える650mlにサイズアップしていて、週あたりの販売本数で3~4本は増えたように見えます。一方、『颯』は昨年のブランド立ち上げの反響もあってか、前年の6掛けくらいまでダウン。売れてなさすぎます」

 大谷翔平効果で「お~いお茶」の東北地方の1店舗あたりの販売本数が25.5%増になったという報道もあった。とはいえ、全国レベルで見ればあまり変化はなかったのかもしれない。

 今や新CMやアンバサダー起用では、大幅な売り上げ増効果はないということだろう。

「綾鷹」と「颯」の差は

 もっとも、ブランディングが完成しているブランドは、継続的なイメージアップを行う販促展開は必要だ。「綾鷹」はコンビニ限定商品のサイズアップを行い、販売は好調とのことだった。こうしたブランドが定着している商品は、増量などの直接的な顧客の支持を得る企画が、今後は大事になるのかもしれない。

 一方、昨年発売された「颯」は、2年目でもブランドが構築できていない様子がうかがえる。他社の攻勢と根強いプライベートブランド商品の浸透が、コンビニにおいては4割前後の売上ダウンに直面したのだろう。

 いち消費者目線で言えば、タレントのギャラやCM制作費のぶん、価格を下げてほしい気持ちもなくはない。ただ、企業としてはイメージアップを継続させ、ブランドを確立するためにはCMやアンバサダーのリニューアルは必要ということだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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