「20年で約1万店の書店が閉店…」 街の本屋さんを国が支えなければならない理由

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フランスや韓国の姿勢

 実は海外では、書店の振興に向け、政府が実際に動いている事例があります。

 例えば、書店の減少を文化の危機と考える前述のフランスには、本の送料無料を制限する「反アマゾン法」があります。ネット書店の送料無料やポイント還元とリアル書店の関係は難しい問題ではありますが、書店を振興するために立法化を含めたさまざまな対策を講じているような文化を守る姿勢には学べる点も多くあると思います。

 それから、韓国では学校の図書館などが本を購入する際、地域の書店を優先する取り組みも行われています。日本では地域の図書館の運営は地方公共団体が行っている。よって、地方公共団体のトップが、「地域と書店」の良好な関係作りに対して意識的になれば、同じような取り組みは政府が乗り出さなくても可能だと思います。

 いまちょうど大河ドラマのモデルになっていますが、日本でも平安時代には、紫式部や清少納言といった書き手を支援し、文化を育む土壌が形成されていました。それを考えると、今の日本の対応はやや遅すぎると指摘されても仕方ないかもしれません。

 PTの活動がそのための一つのメッセージとなり、「街の本屋さんを大事にしよう」という空気が作られていってほしいものです。

「本屋さんを応援したい」という人を一人でも多く増やす

 書店振興PTの発足には、私が思っていた以上にメディアなどから大きな反響がありました。多くの国民の皆さんは実は本屋さんが無くなっていくことについて危機感を持ってくれていたんだということを肌で感じました。

「これをすれば本屋さんの衰退を止められる」という分かりやすい政策はありません。

 しかし、こうしたPTでの議論が、街の書店の大切さについて考えるきっかけになってほしい。「本屋さんを応援したい」という人を一人でも多く増やすことが、結局はいちばんの力になっていくはずだからです。

 かく言う私は、今でも書店に行く時間が欲しい。読みたい本はいくらでもあって、買って積んである本を順番に読んでいます。大臣になって休日にも仕事の資料を読まないといけないことが少なくないのですが、そんな時もついつい本に手が伸びてしまう……。

 そこには必ず新しい世界との出会いがあるからです。

週刊新潮 2024年6月20日号掲載

特別読物「経産省が『書店プロジェクトチーム』設置 20年で半減『街の本屋さん』を国が支えなければならない理由」より

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