「20年で約1万店の書店が閉店…」 街の本屋さんを国が支えなければならない理由
「本屋さんとは出会いの場」
確かに本の「一覧性」という話で言えば、図書館にも同様の機能があります。しかし、気になった本を自分の手元に置き、自由にアンダーラインを引くような読み方は図書館で借りた本ではできません。
よって、リアル書店だけが衰退していく状況を放置していいとはどうしても思えないのです。
今年1月に発生した能登の地震でも、被災した珠洲市の「いろは書店」さんが、仮店舗で営業を再開したというニュースが報道されました。「町には書店が必要だ」という店主の方の熱い思いには胸打たれるものがあります。そのように書店を愛する店主がいて、町の人々が店に集う。そこで見知らぬ人同士が交流することで、新たな出会いが生まれる。このニュースを見て、都市であれ地方であれ、地域にとって書店とは、人々のコミュニティーの一角を占める存在であるのだと実感しました。
書店関係者の皆さんからの声を聞いていると、「本屋さんとは出会いの場である」という言葉をよく耳にします。
いわば、書店はときに新しい本だけではなく、新しい世界、新しい人たちとの出会いを作り出していく場所。PTでの議論では支援のあり方をこれから考えていく段階ですが、本屋さんの地域におけるそのような役割にも注目していきたいです。
忘れられない一冊の本との出会い
〈「出会いの場としての書店」という視点には、大臣自身の原体験がある。大臣自身も書店での「出会い」によって、政治家としての生き方に大きな影響を与えられたという思いがあるという。〉
私の父は本が好きで、幼い頃は毎晩一緒に「ルパン」とか「シャーロック・ホームズ」などの本を読んでくれました。その影響で私も読書好きになり、小学3~4年生の頃から吉川英治の「宮本武蔵」を夢中になって読んでいました。
新宿で育ったものですから、歩いて10分ほどの距離に書店があり、15分も歩けば紀伊國屋の本店にも着きました。お店に入ってふと「面白そうだな」と思って手に取った本を読むことから、自分の視野が思わぬ方向に広がったり、気持ちを充実させてもらったりした出会いが数限りなくあります。
何より印象深く胸に残っているのは、政治家になる前、通商産業省の官僚だった頃に、東京駅前の八重洲ブックセンターで出会った一冊の本の思い出です。
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