「20年で約1万店の書店が閉店…」 街の本屋さんを国が支えなければならない理由

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「書店が減ると文化が劣化する」

 私は書店が衰退している現在の状況に対して、大きな危機感を抱いています。

 活字離れやネット書店の影響からか、書店の数は激減している。「本」と人が出会う方法には、リアル書店、ネット書店、図書館の三つがありますが、この中でリアル書店の数だけが減っているのです。

 私は以前から、書店業界の苦境について、よく話を聞いていました。

 例えば、ネット書店による高いポイント還元によって、本を全国どこでも同じ価格で販売する従来の再販制度が崩れつつあるのではないか。図書館による新刊のベストセラー本の大量貸し出しが書店の利益を奪っているのではないか。また、キャッシュレス化の手数料負担や万引きの問題も書店の経営を圧迫している。こういう声をお聞きしました。

 フランスでは「書店が減ると文化が劣化する」という意識を国が持っているそうです。地域にとって書店は文化と教養の大切な発信地の一つであり、それらを下支えする拠点でもある。経済産業的な視点で言えば、そのような大切なコンテンツ産業の一つが大きく崩れつつある状況を、果たして放っておいていいのでしょうか。

 そこで、今回、経済産業大臣となり、経済産業省としても何かできることがあるのではないか、と考えたことが、書店振興PTを立ち上げた大きな理由です。

「一覧性」の中に…

〈齋藤経産相が書店の置かれた状況の改善に乗り出すようになったのは、2016年、書店経営者との懇談会を開く機会があり、実際に現場の生の声を聞いたことがきっかけだったという。その後、他の自民党議員にも声をかけ、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(通称・書店議連)が発足。その幹事長としての活動も、今回のPT立ち上げの背景にあった。〉

「書店議連」での議論でも繰り返し伝えてきたのが、「書店は地域の中で図書館と並んで本の“一覧性”の中に身を浸らせることができる場所」ということでした。

 書店を訪れると、そこには平積みの本が並び、棚に収められた本のさまざまなタイトルの背表紙を一度に見渡せます。自分に関心のなかったジャンルの本と出会い、自分の視野を広げるきっかけが生まれる。書店で本を選んだり買ったりするという体験は、私たちに、未知なる世界への幅広い興味を与えてくれるものだといえるでしょう。

 興味の対象を検索によって絞り込んでいくネット書店とは異なる魅力が、リアル書店にはある。そのような体験を与えてくれるリアル書店は、私たちにとって世の中を見つめる上での視野を広げてくれる、大切な存在だと感じている人も多いのではないでしょうか。

 私もそう強く感じる一人です。だからこそ、多くの「体験」を与えてくれるリアル書店が、図書館やネット書店とともに共存していく未来――それが日本人の「知」や「教養」のためにも必要だと思うのです。

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