極端な「投高打低」でプロ野球ファンは減らないか? 国民的スポーツが「マニアの趣味」に陥る危険性

国内 社会

  • ブックマーク

本当につまらない

 実際のところは分からないが、とにかく「点が入らない2024年の野球」を数字で見てみよう。具体的には、セ・リーグの2010年と今年を打率と本塁打で比較する。2024年の本塁打は、「このまま(交流戦終了時まで)のペースでシーズンを終えたら」という予想値である。

【2010年】
阪神 .290 173
ヤクルト .268 124
巨人 .266 226
広島 .263 104
中日 .259 119
横浜 .255 117

【2024年】
DeNA .250 83
広島 .240 61
ヤクルト .238 105
中日 .233 62
巨人 .232 72
阪神 .220 58

 どうだろうか……。愕然としないか? ここまで打率と本塁打数が下がっているのだ。広島と中日と阪神に至っては、日本最高記録の60本塁打を2013年に達成したヤクルトのバレンティン一人の数字しか出せていないのだ!

 私はそこまで熱心な野球ファンではない。阪神タイガースがもともと好きだったので、阪神が強い年は試合を観るし、今は「虎テレ」と契約をし、本拠地開催の試合は観るようにしている程度だ。

 だが、試合を観ていて本当につまらないのだ! なにしろ、試合のすべてが「投手がなんとかゼロ点で切り抜ける」が主眼になっている。その背景には、3割打者がいないし、30本塁打を打つ選手がいないことにある。つまり「こいつは打ちそうだ!」という選手がいないのである。

「怒られたくない」モード

 だから、阪神の攻撃の際も「この回は期待ができる!」というものがなく、「なんとかフォアボールで出てくれ」「そしてバントで送ってくれ」「犠牲フライでなんとか返してくれ」といった願いにしかならない。

 しかも、6月18日の日本ハム戦でも見られたように、3塁ランナーの森下がライトへのファールフライの際、タッチアップをしなかったのである。ライトの万波は必死に球にくらいついたため、体勢は悪かった。そこで森下はホームに駆け込んでも良かった。

 だが、打率.220のチーム。その後のヒットも期待できないため、「ここで貴重なランナーを殺すわけにはいかない……」と森下も3塁の藤本コーチも考えたのでは。森下はタッチアップをしなかった。

 だが、私はむしろ「お前! その後が打たないんだからギャンブルをしてでも走れ! しかも万波がいかに強肩だろうが、その態勢だったらまともな送球はできねぇだろ! 打てないんだったらせめて足で稼げ!」と思ったほどである。

 かくして極端な「投高打低」は実につまらない試合の展開をもたらしたわけだ。正直コレを観た瞬間「今は客が入ってるけど、日本のプロ野球は客を失うかもな」と思った。何しろ選手が「怒られたくない」モードに入っているのだ。

次ページ:飛ぶボール導入といった対策を

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。