ラジオ局の謝罪で波紋…「鶴光の下ネタ」すら許さない日本社会と「お政治オバチャン」の増加

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不謹慎な「レイラ」

 不道徳、不謹慎な出発点からも名曲は生まれる。

 エリック・クラプトンの代表曲の多くも、ジョージ・ハリスンの元妻、パティへの思いから生まれた。親友の妻のことが好きで好きでたまらなくなったクラプトンは、用もないのにジョージの家を訪れ、やがて夫が不在のタイミングをねらって訪ねるようになった。

 代表曲「いとしのレイラ」はパティに捧げているし、「ベル・ボトム・ブルース」はパティにベル・ボトムのジーンズをねだられたことからできたし、「ワンダフル・トゥナイト」はパーティーへ出かける夜、パティのドレス選びに時間がかかることを歌った作品だ。

 好きな女性に対する男の思いはものすごく強い。それが友人の妻であっても、自分にすでにパートナーがいても、恋焦がれ、胸がはちきれそうになる。そのエネルギーを込めてつくり歌うからこそ、質の高い曲が生まれる。

 今、日本中、世界中に「お政治オバチャン」が増えているのではないか。

 著作権の侵害はよろしくない。
 下ネタも時と場所を選ぶ必要はあろう。
 不倫もよろしくない。
 ただ、いずれも悪魔払いのように社会全体で叩く事案ではない。

 ただし、こういうことには周期があるとも考えている。昭和は不謹慎・不道徳な事案に甘かった。それがどんどん厳しくなってきた。どこかでまた揺り戻しが来て、おおらかになっていくような気もしている。そうでないと、自分たちで自分たちを苦しめ、どこまでも息苦しくなっていくように思えるのだ。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『不道徳ロック講座』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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