ラジオ局の謝罪で波紋…「鶴光の下ネタ」すら許さない日本社会と「お政治オバチャン」の増加

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差別はないかなと探す「お政治オバチャン」

 ブルース・バンド、憂歌団に「お政治オバチャン」という歌がある。主人公のお政治オバチャンの心は正義の血で燃えている。テレビ、ラジオ、新聞、レコード、あらゆるメディアで「差別はないかな」と探しまくる。

 この歌は彼らのデビュー曲、「おそうじオバチャン」が放送禁止扱いになったことを受けて作られたとされている。「職業差別」だというのが理由だったらしい。何でも差別だと言われることへのフラストレーションを「お政治オバチャン」には感じる。1976年の曲とは思えないくらいに今に通じるものがあるようにも思う。

 現在は「差別」以外にも「問題はないかな」と探す人が増えている。正義の心を持ちながら。

サザンも放送禁止だったが

 こういう報道から感じるのは、許容される世界が狭くなってしまったなあ、ということ。下ネタ、道徳的に不適切な恋愛、メイクラヴの描写などからも、文化やカルチャーは生まれる。

 国民的ロック・バンド、サザンオールスターズがデビューしたときに筆者は高校生だったが、通学の往復で自転車をこぎながら、毎日「女呼んでブギ」を歌っていた。テンションがあがったのだ。部活の帰り道、なぎら健壱さんがアルバム「春歌」で歌っていた「おっぴょ節」を水泳部の仲間たちと合唱していた。

 いずれも放送禁止であるから当時もそれなりに厳しかったのだけれども、今のように関係者に謝罪を求めるようなことはなかったと思う。好きな人はそれぞれに楽しんでいたし、それに目くじらを立てる人もいなかった。

 拙著『不道徳ロック講座』(新潮新書)でいくつも例をあげたが、洋楽には不適切な恋愛ありきで生まれた曲が多い。

 有名な話だが、ビートルズの名曲「ノルウェイの森」はジョン・レノンの浮気未遂から生まれた。当時、ジョンは最初の妻、シンシアと暮らしていたが、ナンパした女性の部屋に泊まる。結局深夜まで話し込み、バスルームに寝かされるが、彼女の部屋にあった木製家具がノルウェイ産だった。それで、曲名は「ノルウェイの森」。

 同じビートルズの「ガール」は女性への想いを歌った切ない曲である。のちにメンバーが明かしたのは、コーラス部分の秘密だ。実はそこで女性のバストの一部の名称を連呼しているというのだ。ビートルズ流の下ネタである。

 あえてビートルズの例を挙げたのは、ロック界においてどちらかと言えば上品な部類だと思われているからだ。その彼らですらこうなので、数々の武勇伝を持つローリング・ストーンズの歌詞にはより直接的なものがいくらでもある。

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