まさに「雨らめしや~」 降雨で幻と消えた“勝利”と地元凱旋の“快打”

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故郷に錦を飾ったものの…

 故郷で行われた試合に先発出場し、最初の打席で凱旋打を放ったにもかかわらず、無情の雨で記録に残ることなく終わったのが、ロッテの外野手・伊志嶺翔大である。

 2017年、プロ7年目を迎えた伊志嶺は、4月12日のオリックス戦で3安打2得点を記録するなど、1、2番打者として活躍。負傷の影響で3試合の出場に終わった前年の借りを返そうと張り切っていた。

 そして、張り切るもうひとつの理由は、6月27、28日の西武戦が郷里・沖縄で行われることだった。ロッテの沖縄での公式戦は、大毎時代の1962年6月13日の阪急戦以来、55年ぶりとあって、伊志嶺は「なかなかない機会。生のプレーをファンに見てもらいたい」と故郷での健闘を誓った。

 そして、6月27日の西武戦、1番センターで先発出場した伊志嶺は1回表、スタンドに詰めかけた40人の兄弟や親戚の前で、フルカウントから野上亮磨のストレートを中前安打。見事故郷に錦を飾った。

 ところが、直後、雨が激しくなり、試合は1時間3分にわたって中断。再開後も、ロッテが3対0とリードした2回に雷雨が激しくなり、2度目の中断を経て、とうとう降雨ノーゲームに。伊志嶺の安打も幻と消えた。

 せっかくのリードがフイになった伊東勤監督は「この時期の沖縄はこういう気候だから仕方ない。伊志嶺が地元でヒットを打ってくれたのが、せめてもの救い。明日、もう1回使います」と仕切り直しを宣言し、伊志嶺も「プレーする姿を見せるのが一番の恩返し。大きな声援がパワーになった。(雨は)仕方ない。明日、また晴れて試合ができたら」とすぐに気持ちを切り替えた。

 翌28日も1番センターで出場した伊志嶺は、安打は記録できなかったものの、1対1の6回に四球で出塁、二盗を決めたあと、2死一、二塁から角中勝也の左前安打で勝ち越しのホームを踏み、地元ファンの大喝采を浴びた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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