「ハイブリッド熊」説の真偽を専門家に聞くと… 被害者の妻が明かす「秋田3人死傷クマ事件」直前の会話 「“爆竹を買った方がいい”と勧めたのですが」
「頭にハエがたかっていたから…」
佐藤さんの知人男性・A氏が証言する。
「自分も15日は山でウドを採っていたのですが、朝9時ごろに佐藤さんのリュックが山道の脇に置かれているのに気が付いた。藪の中に向かって“おーい”と叫んだら、佐藤さんから“今、行くすけ”と返事があった。それで佐藤さんが藪から出てくるのを待っていると、“あちゃあ”という声が聞こえてきたんです」
直後には「おーい」という声も立て続けに3回、耳にしたというが、
「か細い声だったので、佐藤さんの奥さんの声だと思い込んでしまった」
結果、A氏は佐藤夫妻のタケノコ採りの邪魔をするのもやぼだと考えて、その場を離れてしまったという。しかし、以上の経緯があったため、A氏は佐藤さんがクマに襲われたであろう場所に「目星をつけていた」。
A氏は18日、佐藤さんの妻から捜索依頼を受けて、友人とともに入山。そこに佐藤さんの変わり果てた姿を発見したのである。
「佐藤さんは竹藪に、仰向けで倒れていました。頭にハエがたかっていたから、亡くなっていると一目で分かりました」
四肢は硬直しており、
「腕が宙に突き出ていた。まるで、クマともみ合いをしている最中のポーズのように見えました」
“助けて”という警官の声
特筆すべきは遺体が置かれた状態だった。
「周囲の竹藪はなぎ払われていた。クマの巣になっていたんです。実際、新しい糞もあった。また、ご遺体には落ち葉がかけられていました」
クマは餌に土をかぶせて“土饅頭(どまんじゅう)”として保存する。状況から、周囲にクマが潜んでいる可能性は十分考えられたのだが、
「佐藤さんを運ぶために、一度、下山して警察と消防を呼んだのです」
A氏は友人と警官2名、消防隊員4名のあわせて8名で現場に戻った。直後、第二の事件が発生する。
「“佐藤さんを担架で運ぶので後ろからついて来て”と言われたのですが、後ろが一番襲われやすいじゃないかと思ったのを覚えています。担架に近寄った途端、“クマが来た”という叫び声が、ウォーッといううなり声と一緒に聞こえて、慌てて駆けだしました。後方から“助けて”という警官の声もしましたが、消防士も“無理です”と言いながら、逃げだしていました」
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