自覚症状なしで人工透析に… 「寿命を決める臓器」腎臓を守るには1日に何歩歩けばいいのか

ドクター新潮 ライフ

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「寿命を決める臓器」

〈こう警鐘を鳴らすのは、東北大学名誉教授で、山形県立保健医療大学理事長兼学長の上月正博氏だ。腎臓専門医として40年超にわたって患者の治療にあたり、日本腎臓リハビリテーション学会理事長や国際腎臓リハビリテーション学会理事長を歴任してきた、まさに腎臓の名医である。

 その上月氏が紅麹問題を機に、国民病ともいうべきCKDから身を守るための健康法を詳しく解説する。〉

 腎臓は、昔は「尿を作る臓器」という程度でしか認識されず、どちらかといえば“マイナー”な臓器でした。ところが近年では、尿を作るだけではなく、血液の成分を適正に調整してくれ、「寿命を決める臓器」として認識されるようになっています。これが、先ほど申し上げた「腎臓の地位向上」の意味です。それなのにCKDの患者が減る傾向は見られず、重症化して末期腎不全に陥り、人工透析になってしまう人も後を絶たないのが現状です。

 その背景としては三つの理由が考えられます。

自覚症状がない

 一つは検査の精度が上がったことです。かつては尿たんぱく検査が主流でしたが、最近は血清クレアチニン値を測る方法が広まり、健康診断などで腎機能の低下をより早く、より適切に見極められるようになりました。要は腎機能の低下を「見つけやすくなった」のです。

 そう考えると、CKDの患者数の増加は「見えなかった患者さん」が「見える患者さん」になったともいえ、悪いことではないように思えるかもしれません。

 しかし一方で、健診で腎機能の低下が明らかになっても、初期の頃はほとんど自覚症状がないため「放置」してしまう人が少なくありません。結果的に腎機能の低下が進んでしまう。これが二つめの理由です。

 また、加齢に伴って腎機能は低下するので、わが国の超高齢化が三つめの理由です。

 腎機能障害の初期症状は、疲れやすさや体のだるさとして現れますが、こうした症状は高齢者であればあるほど「年を取ったせいかな? 仕方がない」と流してしまいやすい。腎機能低下の恐ろしさは、この自覚症状の弱さにあります。

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