「マンション価格」高騰で「賃貸物件」はどうなる? 専門家が明かす“特に賃料の値上がり幅が大きい”タイプの部屋とは

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マンション賃料も長期的に上昇トレンド

 参考になるのが、アットホーム株式会社と三井住友トラスト基礎研究所が共同開発した「マンション賃料インデックス」という賃料指標だという。

「2009年のリーマンショックを起点に、2023年末までの賃料の推移を見ると、長期的な金融緩和などを背景に、マンション賃料も長期的な上昇トレンドを描いていることが分かります」(渕ノ上氏)

 データによれば、東京23区全体では2009年比でプラス17.5%、大阪市ではプラス28.9%もの賃料の伸びが確認できる。逆に名古屋市ではマイナス2.3%と、地域による差が大きいことも分かる。

「なかでも、マンション投資の主戦場である東京23区内だけに照準を絞ると、エリアによってかなり差が激しいことが見て取れます」(渕ノ上氏)

 上昇率でトップなのは「日本橋・人形町」エリアの2009年比プラス32.8%。その後は「四谷・麹町」のプラス22.6%、「三田・芝公園」のプラス22.5%、「月島・勝どき」のプラス21.5%、「銀座・新富町」のプラス18.0%と続く。

「前期比の数字にも注目したいですね。日本橋・人形町はプラス5.1%なのに対し、マイナスのエリアもちらほらとあります。賃料の伸びに差が出るのは、そもそも母集団が少ないため、ちょっとした値下がりの事例を拾ってしまうことや、再開発の有無や企業の本社移転など複合的な要因がありますが、インフレ環境下で賃料が伸び悩むエリアにはキャッチアップできない何らかの理由があると考えられます」(渕ノ上氏)

物件価格と比べ、賃料には“遅行性”がある

 もちろん、同じ区内でも駅距離や築年数など、賃料はその物件が持つ特性に大きく左右される。その上で、あえて貸主、借主それぞれの狙い目のエリアを聞いてみると――。

「例えば、板橋区の三田線沿線や大田区の賃貸物件は、分譲マンションの売買価格の値上がりと比較して賃料の値上がり幅の遅行が大きいので、割安と言えるでしょう。大手町エリアへのアクセスが良く、比較的まだ賃料が安いエリアは存在します」(渕ノ上氏)

 それでは、不動産投資を考えているオーナーさんにおすすめなのは――?

「大規模な再開発を控える、港区の品川駅エリアは賃料の増加が見込まれています。物件価格も高いですが…。全般的に言えるのは、オーナーチェンジ物件は割安なケースが多いということ。住居者が退去するタイミングで賃料を上げることができるケースも多いため、利回りの改善を見込めます」(渕ノ上氏)

 ただ、賃貸のメインとなる単身者向けのワンルームマンションや、30平米前後のコンパクトな物件は、数も多くの物件ごとの条件がより細分化するため、エリアの相場観を掴みにくい。「買って住む」という“実需”とはまた違ったロジックも働くため、借りる人にとっても、貸す人にとってもより難易度が高いと言えそうだ。

「私たちが開発した“INVASE Pro”というアプリは、そのエリアの賃料相場や利回りの目安を物件ごとに可視化しています。メインは不動産投資をするオーナーさん向けの機能なのですが、そのエリアの相場観を知る上では借主の方にも参考になるはず。よければ使ってみてください」(渕ノ上氏)

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