「全国5188の医療機関でトラブル」「患者がわめいて警察沙汰」「死亡事案も発生」マイナ保険証導入で大混乱の医療現場に何が起きているのか
全国で5188の医療機関から
実際、マイナ保険証をめぐるトラブルは枚挙にいとまがない。
城北病院(石川県金沢市)の内科副院長・柳沢深志医師が、
「マイナ保険証の保険情報が読み取れず、保険資格が有効なのか確認できないというトラブルは当院でも報告されています。また、他の医療機関では、カードリーダーで顔認証しようとしても、うまく認証できなかったというトラブルもあったと聞いています」
と言えば、東京保険医協会の須田昭夫会長も次のように述べる。
「国が総点検に取りかかった後の昨年10月以降に行った保団連の調査でも、全国で5188の医療機関からマイナ保険証でのトラブルがあったと報告を受けています。その中には保険資格の確認ができず、いわゆる10割負担での請求を余儀なくされた事例も753件ありました」
保団連によると、マイナ保険証をめぐる主なトラブルの類型は以下の通りだ。
・顔認証付きカードリーダーが起動しない。
・顔認証付きカードリーダーで顔認証ができない。
・高齢者がうまく使えない。暗証番号も忘れてしまう。
・顔認証付きカードリーダーがクリニックに1台しかないので待合室が混雑する。
・健康保険証は有効なのにマイナ保険証で「無効」と表記される。
・高齢者医療費の窓口負担割合が反映されない。
前出の須田氏が言う。
「患者と医療機関のあいだでもトラブルが起きています。健康保険証は“有効”なのに、マイナ保険証で“無効”とされた患者が、医療機関のスタッフに苦情を言い立てるなど序の口。中にはマイナ保険証を利用しようとした患者がカードリーダーでマイナ保険証の読み取りができないことに腹を立てて院内でわめき散らし、警察沙汰になったケースもあります」
また、大阪府保険医協会の井上美佐副理事長は、同協会の会員に対して行った調査結果(5月末にアンケート用紙送付。6月6日までに返信結果を集計)について、
「アンケートに答えていただいた医療機関の件数は247件で、そのうちの160件でトラブルがありました。トラブルの具体的な内容としては、資格情報が無効と出たというのが74件。表示された情報に●と伏字が出たのも74件。さらに、カードリーダーの読み込み時エラーが55件、リーダーの接続時不具合で読み込めなかったのが40件です」
こう明かして、直近でも現場の混乱が収まっていない様子を伝えるのである。
有料版ではこうしたトラブルのほか、マイナ保険証が読み取れずに患者が死亡してしまったケースを紹介。ほかに資金難で個人医院が閉院に追い込まれる事例など、医療の行く末を左右するマイナ保険証の大混乱を徹底検証している。