【追悼】「ただ声をあてているのではなく…」 「ルパン三世」峰不二子役・増山江威子さんの“声優としての信念”

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 スタイル抜群で活発。仲間を平気で裏切り、お宝をかすめ取る。欲深いが憎めない。そして謎めいている。峰不二子は「ルパン三世」において主人公に勝るとも劣らぬ人気者だ。「ルパ~ン」と甘えた声でささやくだけで怪盗をも翻弄する。

 その声を「ルパン三世」のテレビアニメ第2シリーズが始まった1977年から34年にわたり演じていたのが、増山江威子さんだ。

 声優の羽佐間道夫さんは思い返す。

「色っぽくても品を感じさせ、いやらしくならない。声に表情があり心の動きも自然と伝わってきました」

「ルパン三世」の原作漫画を描いたモンキー・パンチさんが2019年に亡くなった時、増山さんは「週刊新潮」の「墓碑銘」欄に、〈ただ声をあてているのではなく、人物を掘り下げて一体化している気持ちでした。これほど魅力ある役に出会えて感謝しています〉と語っている。さらには〈ファンの皆さんが持っている不二子のイメージを壊してはいけないと、私はできるだけ姿を見せないようにしていました〉とも。そこまで役に思いを込めていたのだ。

実は「劇団四季」出身だった

 36年、東京生まれ。ゆっくりした話し方を克服しようと児童劇団に入る。演技に関心が深まり毒蝮三太夫さんらと「劇団山王」を旗揚げ。毒蝮さんは振り返る。

「本名が知子でトンチと呼ばれ、かわいらしい声で清潔感があったね。浅利慶太に頼まれ役者不足の『劇団四季』に移った。演技もナレーションも上手。聞きやすくて引き込まれる。役者の心構えを持ち続けていた」

 舞台を離れ、声の仕事に専念したのは仕事と家庭を両立させるためだった。

 料理バラエティー番組のはしりである「料理天国」を後に生み出したTBSのプロデューサー、政田一喜さんと結婚。1女を授かる。

 長女の美加さんは言う。

「テレビから母の声が聞こえてくるのが当たり前のように育ちました。帰りが遅くなる時には私が寝る前に聴けるようにテープにお話を吹き込んでいました。学校の行事にも参加して、中高6年間、弁当を欠かさず作ってくれました。おおらかで、何でもやってごらんなさいと背中を押してくれる母でした」

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