米国はうなぎ上りだったマンション価格が急落…不動産バブル崩壊から金融危機に至るリスク高まる
地方銀行の次は大手銀行
現在、問題視されているのは地方銀行だ。地方銀行はここ数年、商業用不動産向け融資を急増させていたが、多くの場合、不動産の価値がピーク時の数分の一に落ち込んだ。
今年満期を迎える商業用不動産向け融資総額は推定4110億ドル(6月11日付ブルームバーグ)に上るが、延滞率の上昇に伴いFRBは警戒を強めている。市場では地方銀行のさらなる破綻も予測されている。
気になるのは、これまで被害が少ないと言われてきた大手銀行もリスクを抱えていると明らかになったことだ。直接の貸し付けは少ないものの、不動産投資信託(REIT)向けに多額のローンなどを行ってきたからだ。
大手銀行の商業用不動産へのエクスポージャー(投融資残高)は2022年第4四半期時点の3450億ドル(約54兆円)となり、2013年第4四半期(1090億ドル)に比べて3倍以上になっている(5月30日付ブルームバーグ)。
マイホーム獲得の負担は増すばかり
商業用不動産市場に潜むリスクが日に日に増大していることに加え、住宅用不動産市場にも暗い影が忍び寄っている。
リーマンショック後の15年間にわたって深刻な供給不足が続いたことから、米国の住宅価格は高騰を続けている。持ち家を維持するコストも2020年から26%増加(6月11日付ブルームバーグ)しており、マイホーム獲得の負担は増すばかりだ。
住宅ローン金利の上昇も追い打ちをかけている。
2019年以降に変動金利でローンを組んで住宅を購入した約170万人が今後、金利の上昇のせいで返済に窮する事態に陥ると予測されている(5月30日付ブルームバーグ)。最初は低利だったが、その後の金利の上昇で焦げ付きが急増した、かつてのサブプライムローンの破綻騒動を彷彿とさせる。
さらに気がかりなのは、2010年代以降、米国で急拡大した集合住宅(マンション)市場が変調をきたしていることだ。
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