【虎に翼】視聴率20%超も見えてきた 「史上最強のリーガルドラマ」と呼ばれる理由を徹底分析

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「時報代わり」時代の終焉

 若い世代もよく観ている。若い世代は動画で海外ドラマを見慣れているので、国際規格ドラマになっていることも影響しているのではないか。

 関東、名古屋、大阪の世代別視聴率を見てみたい。関東で2度目の世帯視聴率18.0%(個人10.0%)をマークした14日の第55回の数字だ。

・関東/世帯18.0%、個人10.0%、F1層(女性20~34歳の個人視聴率)1.5%、T層(13~19歳の個人視聴率)1.0%

・名古屋/世帯17.6%、個人9.8%、F1層4.9%、T層0.9%

・関西/世帯14.5%、個人7.7%、F1層0.5%、T層1.2%

 名古屋のF1層の数字が突出している。同じ日の同地区での「ミュージックステーション2時間スペシャル」(テレビ朝日系メ~テレ)のF1層4.7%、「イップス」(フジテレビ系東海テレビ)の同1.1%、「9ボーダー」(TBS系CBS)は同4.0%を超えている。

 3番組はいずれもF1層を意識したもので、しかも視聴者の多いプライム帯(午後7~午後11時)での放送だったから、それを上回ったのは大きい。

 この朝ドラは東京制作。関西では東京制作作品の視聴率が低くなりがちだが、この朝ドラは様相が異なる。大阪制作「ブギウギ」の同じ第55回の関西での視聴率は世帯13.4%、個人7.2%、F1層0.3%、T層1.7%だったので、T層以外はかなり上だ。

 物語がスピーディに進むところも若い世代には合うのだろう。なにしろドラマや映画を2倍速、3倍速で観る人もいるのだから。また、1回15分に収められている内容の密度も濃い。だから、家事や出勤準備をしながらの“ながら視聴”は難しい。

 また、伊藤ら出演陣は表情だけで胸の内を表す演技を多用している。たとえば第57回。大晦日まで働いた寅子が、新年2日に多岐川から「キュウヨウアリ」という電報を受け取った際の怒りに満ち満ちた顔である。やはり、ながら視聴は困難だ。

 しかし、そもそも「おかえりモネ」が放送中だった2021年、NHKの正籬聡副会長(当時)は「もうリアルタイム視聴に拘らない」と声明した。録画やNHKオンデマンドなどでじっくり観ることも歓迎するという意向を示していた。

 朝ドラを1作品、大河ドラマを3作品書いた大脚本家は昭和期、「朝ドラは正面から、横から、上から撮るもの」と言った。ながら視聴組が多いから、それくらい丁寧に描かないと内容が伝わらないという意味である。

 しかし、「虎に翼」のヒットによって、朝ドラが時報代わりだった時代は完全に終わりを遂げた。

高堀冬彦(たかほり.ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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