【虎に翼】視聴率20%超も見えてきた 「史上最強のリーガルドラマ」と呼ばれる理由を徹底分析

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ヒットの理由は?

 まず、吉田恵里香氏の脚本はシリアスとコミカルのバランスが絶妙。笑わせ方もドタバタ調でなく、スマートだから、広く受け入れられるだろう。また、法律、司法制度という硬質のテーマを扱いながら、観る側の肩を凝らせない。

 それでいて面白さを増すために、法律や判例を大きく曲げることもしていない。だから、元最高裁判事の桜井龍子氏(77)や有罪率99.9%の刑事裁判において無罪判決を30件以上も出した伝説の元裁判官・木谷明弁護士(86)ら、大物法曹人もこぞって絶賛している。史上最強のリーガルドラマと呼んで差し支えないだろう。

 主人公・佐田寅子役の伊藤沙莉(30)の演技も非の打ちどころがない。伊藤は2枚目も3枚目も得意で、それを瞬時に切り替えられる奇特な人だが、民放ドラマでは3枚目一色の役が目立ち、勿体なかった。

 その演技力は主演作「獣道」(2017年)などの映画でしか存分に生かされてなかったが、このドラマは違う。伊藤の持ち味が存分に表されている。

 また、寅子の夫・佐田優三役の仲野太賀(31)が死去により退場し、淋しさをおぼえていたら、寅子の直属の上司で家庭裁判所設立準備室長・多岐川幸四郎役の滝藤賢一(47)が登場。観る側の喪失感を最小限に食い止めている。寅子のモデル・三淵嘉子さんの生涯をなぞっているとはいえ、よく出来ている。

 2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に次いで制作統括を務めている尾崎裕和氏らの施す演出も出色。法律が絡む物語はどうしても硬くなりがちだから、視聴者側が物語に慣れるまで無声映画風の劇中劇などを採り入れた。今は固定ファンが付き、その必要がないので、奇をてらった演出をなくした。

 作品の逃げない姿勢もいい。憲法第14条がテーマだから、おのずと男女不平等問題、民族差別問題、経済的格差問題が関わってくるが、それを真正面から描いている。意見が分かれている少年犯罪と刑罰の問題についてもそうだ。

 どんな作風のドラマにも社会問題を盛り込むのは、欧米のドラマならごく自然なことであるものの、自主規制が横行する日本のドラマ界では珍しい。「虎に翼」は知らぬ間に国際規格のドラマになっている。

 政治色があると批判する向きもある。そうは思わないが、米国ドラマでは登場人物たちがクリントン、オバマ両元大統領らを批判したり、からかったりするのは当たり前だ。世間の人の姿を再現するのだから。

「虎に翼」程度の内容が問題視されるようでは、表現の自由などあったものではない。また、大物法曹人が揃って誉めていることでも分かるとおり、放送法にも全く触れていない。

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